2023年4月2日 06:00
東京・赤羽「三益酒店」の三姉妹 枯れかけた昭和親父の酒店「もう一度、咲かせます!」
逆に店がいくらきれいでも、お客が求める酒が棚になければ、店は潰れてしまうんだ」
左党の記者には、先代の言葉はよく理解できた。それを、そのまま伝えると「ものには限度があります」と三代目はピシャリ。
「だって、雨漏りでお客様の服がぬれたり、せっかく仕入れたお酒のラベルが汚れてしまったりしていたんですよ」
由美さんが「雨漏りだけじゃなかったよね」と口を挟んだ。
「当時、店には看板もなかったんです。それで、お姉ちゃんと相談して、昔から付き合いのあった飲食店さんに業者さんを紹介してもらって。父のいない日を見計らって見積もりを取りに来てもらった。ところが、そんなときに限って父が店に。あっという間に怒りだして、『ここは俺の店だ、勝手なことするな!』って怒鳴り散らして」
最後には、お決まりの「出ていけ!」という父の怒声が、店の外にまで響き渡っていた。
いつしか由美さんと並んで美保さんも、店の倉庫で涙をこぼすように。
それでも「泣いてばかりではダメ」と、姉妹は互いを奮い立たせ、毎日接客に励んだ。しかし……。美保さんが恨めしそうにこぼす。
「当時20代だった私たちより、お客さんのほうがお酒についてはベテランで。