知育絵本の歴史は『ウォーリーをさがせ!』から始まった
大人も子供も夢中になった『ウォーリーをさがせ』
住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう!わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、夢中になった本の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょうーー。
「イギリスのイラストレーターであるマーティン・ハンドフォード氏が、’87年に出版した絵本『ウォーリーをさがせ!』(フレーベル館)は、’90年代になって日本でベストセラーとなりました。細かく描かれた大勢のキャラクターのなかから、赤と白のボーダーシャツ姿で、丸メガネをかけたウォーリーを探すというゲーム感覚で楽しめる絵本。銀行や歯科医院、美容院など、待ち時間が必要な場所に置かれていたので、手にしたことがある人も多いでしょう」
こう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。それまでの絵本といえば子どもが読むものだったが、同書には大人たちが目を輝かせた。
「かわいいウォーリーのキャラクターは、ポップアートとしても楽しめました。女性社員の多くが内勤だった当時、職場でのお昼休みに、制服姿で同僚たちとウォーリーを探して盛り上がっていたのではないでしょうか。
’90年代といえば、目の焦点をずらすことで絵が立体的に浮かび上がる『ステレオグラム』も、大判の本となってヒットしていました。こうしたブームの流れもあり、書店の絵本コーナーも大人を意識したものになっていったのです」
■苦行で快感で知育。“探す”系絵本の元祖
同書は子どもたちに買い与えたい本でもあった。
「『タイムトラベラーウォーリーをおえ!』(’88年)や『ウォーリーのふしぎなたび』(’89年・ともにフレーベル館)など、さまざまなシチュエーションがあり、想像力が養われる作りになっています。また、当時はゲームボーイが全盛で、子どもたちはそれぞれゲームに熱中し、一緒にいるのに一言もしゃべらず個別に遊ぶ、という光景も見られました。子どもたちには、みんなでワイワイと楽しめるウォーリーの本で遊んでもらいたいと思っていた親も多いはず」
バラエティ番組『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(’90~’93年・フジテレビ系)では、画面からナンチャン(南原清隆)を見つける“ナンチャンを探せ!”のコーナーも好評。
シリーズ累計発行部数は1000万部超を記録しており、アニメ化、テレビゲーム化もされた。’18年には誕生30周年を記念して『ウォーリーをさがせ!展』が全国を巡回。
「かつてはタウンページ、現在でも不動産情報サービス『アットホーム』のCMキャラクターに採用されています。“多くのなかから見つける”といえばウォーリー。もはや日本人のDNAに刻まれているといえるほどの作品です」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍
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