小野寺昭 実は『太陽にほえろ!』って13回で終わる予定でした
刑事ドラマの金字塔『太陽にほえろ!』
青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!
【『太陽にほえろ!』(日本テレビ系・’72~’86年)】
石原裕次郎さん演じる“ボス”こと藤堂係長を中心に、山さん、ゴリさんなど個性豊かな七曲署の刑事たちが体当たりで犯罪にぶつかっていく刑事ドラマの金字塔。絶頂期の’70年代後半は視聴率が40%を超えることも。
「『太陽にほえろ!』が始まったの、もう51年前。じつはちょっと前の50周年のとき、俳優や脚本家、スタッフの方とか総勢20人くらいが集まって、非公式の同窓会をしたんですよ。旅館を借り切って、夕方から次の日のお昼まで(笑)」
こう語るのは“殿下”こと、島公之刑事を演じた小野寺昭さん(79)だ。
「ドラマ放送開始当時は映画全盛。石原裕次郎さんは撮影の合間に『俺は映画の世界の人間だから、テレビはあんまりやりたくなかったんだけどな』なんておっしゃるんです。
制作サイドは『とりあえず1クール13本だけやってくれ』と説得したそうです」
ところが番組は予想以上の反響で、13本の予定が、「半年やろう」「いや1年だ」と延長を重ねた。
「萩原健一さんはわれわれの前で『1年もやるのかよ。俺もう飽きちゃったよ』と冗談半分に言っていましたが、その言葉どおり萩原さんは1年で殉職することに」
■殉職シーンは“あっさり、あっけなく”とリクエスト
憧れだった裕次郎さんとは、回を重ねるごとに打ち解け、かわいがってもらったという。
「石原さんは撮影現場にキャンピングカーで来るのですが、『冷たいものでも飲んでけよ』と誘ってくれたことも。僕とテキサス(勝野洋)とボン(宮内淳さん)でハワイに行ったときは、石原さんが自分のヨットでワイキキを一周してくれました」
個性の強い人気俳優に囲まれても、殿下は存在感を放っていた。
「僕は普通の青年っぽかったんですよ。でも、それが自分の持ち味だと感じてね。スリーピースのスーツも衣装さんと相談して決めました。
最初はありものだったけど、2年目くらいからオーダーに」
どこに行っても「殿下」と呼ばれる人気キャラクターに成長。だが、放送開始から5年もたつと、迷いも出てくる。
「このまま刑事をやっていると、いい人しかできない。悪役もやりたいと思って『やめさせてください』とプロデューサーにお願いしたのですが、『とんでもねえ、ばか野郎!』って一喝(笑)」
1年を経て再び相談したところ、「じゃあ殿下、悪いけどもう1年だけ」と説得され、8年目に殉職することになった。
「殉職シーンは自分で希望を出すことができたんです。僕は、あっさり、あっけなくと希望したから、暴走トラックをよけそこなって崖下に落っこちるというシーンが用意されました」
殉職しても、ドラマが終了しても“殿下”と呼ばれ続けた。
「それが嫌な時期もあったけど、今ではすごいことだと受け入れています。僕の役者としてのベースになったドラマですね」
【PROFILE】
小野寺昭
’43年、北海道生まれ。
’69年の『パンとあこがれ』(TBS系)でデビューして以来、数多くのテレビドラマに出演。舞台やナレーションでも活躍している。
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