「今日も明日も満員御礼」老舗劇団を女性4世代で守り続ける80歳の現役女優・佐々木愛さん
ようやく小学校入学とともに北区田端で両親との同居が始まるが、
「母は『子供のせいで仕事を断るのはイヤ』と言い、けっして裕福ではなかったのですが、お手伝いさんを雇いました。その費用を稼ぐために女優業をしながら軒先に『靴下のお直し致します』の看板を掲げ、ナイロンストッキングの伝線を直す内職を始めたんです」
一方の父親は芝居には厳しかったが、ふだんは人間味豊かな硬骨漢。
「秋田の下級武士の家の長男で、徹底して差別を嫌い、口癖は『歴史を勉強しなさい』『読みかけの本を持ちなさい』でした」
同じ田端の、現在も文化座の稽古場がある場所に引っ越したのが小学4年のとき。地元の小中学校を経て、和光学園高等部へ進む。「この家は、本当にドア1枚で私たち家族の住居と稽古場がつながっていました。部屋で勉強していると、稽古の音や劇団員がお酒を飲んで熱い演劇論を闘わせる声が聞こえるんです。その真剣さを目の当たりにして、私なんかにはとても役者は務まらないと思い、映画出演の話も来ましたが断り続けました」
中学ではテニス部、高校では美術部に所属。高2の進路相談では医師を目指すと話すつもりだったが、逆に担任にこう説得される。