「今日も明日も満員御礼」老舗劇団を女性4世代で守り続ける80歳の現役女優・佐々木愛さん
「せっかくそういう環境に育っているんだから、ご両親と同じ道を考えてもいいのでは」
直後から、昼は高校生、夜は文化座研究生という生活が始まった。
初舞台は、高2の夏。広島の貧農に生まれた女性の生涯を描いた『荷車の歌』の孫娘役で、旅公演も経験した。主役は母で、演出は父だった。ところが愛さんが高校卒業後に正式に入座してまもなく、その隆さんが直腸がんの宣告を受ける。
「父のがんが知れわたって以降、公演に呼んでくれる主催者も激減し、劇団の経済状況も悪化して、私はテレビなどの仕事も積極的に引き受けるようになりました」
やがて連続ドラマ『絶唱』に主演してアイドル的な人気者となり、多忙な芸能活動の合間を縫っては父親を見舞っていた。
「自宅療養中など、隣が稽古場ですから、寝たきりのはずの父が突然ガウン姿で現れ、劇団員に『君、そういう芝居はいけません』とダメ出しする場面もありました」
生涯を演劇に捧げた隆さんが亡くなったのは、愛さんが24歳のとき。カリスマを失い劇団の存続が危ぶまれたが、母親の光枝さんが代表を継ぐこととなった。
■「女も自分と子供の身を守る経済力を」という母の教えを娘にも
愛さんが、8歳年上の照明スタッフの原田進平さんと結婚したのは27歳のとき。