80歳の現役女優・佐々木愛さんが孫娘へと引き継ぐ「舞台でしか味わえないモヤモヤ」
「どうする。お芝居に出る?それとも保育園の運動会に出る?」
座長であり、祖母でもある愛さんの問いかけに、まだ6歳だった琴音さんは、悩んだ末に答えた。
「舞台に出る」
こうして鈴木光枝追悼公演に子役として出演し、40日間の旅巡業も体験した。
琴音さんが言う。
「その後も文化座の近くに住んでいましたから、小学校の通学路に稽古場があって、放課後はランドセルを置いて大道具さんの仕事を手伝ったりするのが日常でした」
東日本大震災を機に愛さんとの同居も始まり、やがて明子さんも制作部で働き始める。
「もともと人と関わるのも、5歳でクラシックバレエを始めてからは目立つのも好きでした(笑)」と話す琴音さん。中高とスポーツに熱中し、卒業後の進路に悩んでいたとき助言をくれたのはやはり祖母だった。当の愛さんが語る。
「明子もそうでしたが、孫の琴音もこの家に生まれたからといって演劇に縛るつもりはありませんでした。ただ同居していて、いろんなアルバイトをする姿は見ていたし、プロダクションからの琴音宛ての郵便物を目にすることが何度かあって、どうせやるならば、うちに来たほうがいいんじゃないかと思い(笑)