80歳の現役女優・佐々木愛さんが孫娘へと引き継ぐ「舞台でしか味わえないモヤモヤ」
愛さんもこう語る。
「1970年の映画『沖縄』では母と共演し、復帰前の沖縄にもパスポート持参で行きました。当時から持ち続けた私の沖縄への思いを実現させたのが、敗戦後の沖縄の人たちの非暴力の闘いをテーマとした『命どぅ宝』、命こそ宝です」
そこには、父や母の代から孫世代まで脈々と受け継がれてきた、ある思いがあった。
「芝居を通じて平和への思いを訴え続けてきたなかで、父もそうでしたが、私も戦争反対のメッセージをダイレクトに掲げるのは好きじゃなかった。芝居をご覧になった方が、『そうか、社会の諸悪のもとに戦争があるんだ』と、それぞれの立場で気づいてもらえるような芝居作りを心がけてきました」
そんなとき、いつも思い出す母の言葉があった。
「満州で敗戦を迎えて抑留生活を送ったとき、私たちは何も知らされていなかった。でも今、あなたたちは、いくらでも情報を得られる社会に暮らしている」
女優としての生活を貫き、いつもは理屈っぽいことを口にしなかった光枝さんの言葉だけに、余計に心に残っている。
「今は、さらに情報があふれている時代。
だから、『今度、戦争が起きたら、あなたたちの責任よ』と、そんな声が聞こえます」