風評被害対策費に、輸出への悪影響…ALPS処理水の海洋放出はもはや“コスト高”でメリットなし
あくまでも試算だとか、風評被害対策は別途必要などのただし書きはあるものの、海洋放出のメリットを強調した内容で、世論誘導の意図が見えたものでした」
■当初の見積もりから大幅に増えた費用
実際に、この報告書に基づいてメディアが報じたことで、「一気に世論が“海洋放出やむなし”に傾いた」と牧内さんは言う。
しかし、この34億円という試算は何だったと感じるほどに、海洋放出にかかる費用が膨らんでいるのだ。原子力市民委員会のメンバーでプラント技術者の川井康郎さんは、次のように指摘する。
「処理水の量が当初より増えていることも関係しているでしょう。しかし、それとは別に、当初考えられていた海洋放出のスキームが、あまりにもお粗末すぎたんです」
それは「報告書を見れば一目瞭然だ」と、川井さんは続ける。
「報告書に示されたイメージ図には、海水を引き込むための建屋とポンプが設置されているのみ。費用を安く見積もるために、意図的に簡略化したかのような図でした」
不安は的中した。東電は政府が海洋放出を決定した2021年4月から4カ月後の8月に、“海底トンネル”を掘って1キロメートル沖合の海底に放出するという大がかりな計画を発表。