辰巳琢郎『少女に何が起ったか』身長差がありすぎてキョンキョンは2段の台の上に
『少女に何が起ったか』でピアノ科の助教授を演じた辰巳琢郎
青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!
【『少女に何が起こったか』(TBS系・’85年)】
北海道で母と暮らしていた野川雪(小泉今日子)は、母の死後、自身の出生の秘密を明らかにするため東京の東家に乗り込む。深夜0時から1時間だけピアノの練習を許されていたが、いつも川村刑事(石立鉄男)に「おい!薄汚ねえシンデレラ」と邪魔された。
「僕にとって『少女に何が起ったか』は、NHKの朝ドラ『ロマンス』に続くドラマ出演2作目。初めて一緒に仕事をしたアイドルはキョンキョン(小泉今日子)なんです」
こう語るのは、俳優の辰巳琢郎さん(65)。小泉今日子が演じた出生の秘密を抱えた音大生の、憧れの指導者・大津光三を演じた。
「撮影に入る2カ月ほど前から、音大の大学院生3人にピアノの弾き方を教わりました。といっても本当に弾くんじゃなく、上手に弾いているように見せる特訓です。
実際に出る音はひどいものだったんですが……」
衣装は役作りに非常に大切だと、プロデューサー自らテーラーに同行し、生地から選んで仕立ててくれた。
「カメラマンや照明さん、音声さんなどもプロ集団。怖い人たちが多かったですが、新人を育てようという雰囲気のある現場でした」
忘れられないのは第1話。真冬の北海道・抜海村でのロケだ。
「海辺のシーンで風も強く、氷点下20度ぐらいですから、口が凍えてセリフにならないんです。東京に帰ってからアフレコせざるをえませんでした」
■意表を突く展開が連続のストーリー
小柄な小泉今日子と身長が釣り合わず、苦労したことも。
「背の高さを調整する台が常備されていました。業界用語で『セッシュウ台』と言います。
一つのタイトな画面にたくさんの登場人物を詰め込むのが増村保造監督のスタイルだったので、長門裕之さん、岸田今日子さん、松村達雄さんなど錚々たる出演陣が台を一段、キョンキョンは台を二段重ねにして立ち、その間を僕が縫うようにして歩いて、長ゼリフを言うシーンもあったんです」
同ドラマの最大の魅力は「この薄汚ねえシンデレラ」と、主人公をいじめ抜く石立鉄男演じる刑事など、大げさなセリフを放つ強烈なキャラだ。
「台本を見ると《パパっ!ママっ!》といった具合に、何に対しても語尾には『っ』や『!』が入っていました。最初は入っていなくても、追加されるんです。話の展開にも意表を突かれっぱなしでした。たとえば音大でキョンキョンが率いる野良猫チームが、ライバル関係にある賀来(千香子)ちゃん率いるお嬢さまチームとドッジボールで対決するのですが、そもそも指が命のピアニストがドッジボールをするなんてありえないですよね(笑)」
とはいえ、こうした特色がクセになる魅力となり、20%を超える平均視聴率をたたき出したのだ。
【PROFILE】
辰巳琢郎
’58年生まれ、大阪府出身。’84年のNHK朝ドラ『ロマンス』で全国区デビュー。8月31日~9月3日、博品館劇場の舞台『シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~』に出演し、来航200年となるシーボルトを演じる
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