2023年9月27日 11:00
蛭子さん“最後の展覧会”制作現場の挨拶は「毎回『初めまして』」
と診断された。取材でも人の名前を忘れたり前日のロケのことを覚えていなかったりと兆候はあった。しかし、興味がないことに無関心な蛭子さんの“味”だと思っていた。
’20年7月、蛭子さんは、アルツハイマー病とレビー小体型認知症を併発していることを公にした。
「ボケても、仕事したい」
公表後にこう話していた蛭子さん。コロナ禍と重なり直接会う機会は減ったが連載は続いた。
ところが症状は思いのほか進行した。自分について語ることはできるが、人の悩みに答えるような言葉は出てこなくなった。
「今こそ蛭子さんに絵を描いてもらって、展覧会を開催できたらと思っているんです」
’21年秋、連載の担当編集者がこう切り出した。サブカルチャー好きの編集者は、タレントよりも漫画家としての蛭子さんのファン。認知症を公表後、テレビの仕事が激減した蛭子さんに、絵の仕事をしてもらおうという提案だった。
認知症をなめていると思った。
じつは、わたしの母も認知症だ。5年前に80歳直前でアルツハイマー型認知症と診断された。朗らかだった母から、昼夜問わず被害妄想にかられて「財布が盗まれた」「誰かが家にいる」と連絡が入った。