「ずっと私をたしなめてほしかった」三回忌追悼企画“いま寂聴さんに願うこと”
豊田監督からは『女として生きる』を意識して演じるように指導いただきました」
三田佳子さんと寂聴さんの出会いは半世紀近く前にさかのぼる。同作品には尼僧役として寂聴さんも出演しているという。
「撮影現場にいらしたときにご挨拶しましたが、笑顔が素敵で眩しく感じたことを覚えています」
それ以降、季節ごとの手紙のやりとりや対談をするように。さらに縁が深まったきっかけは、寂聴さんのライフワークでもあった現代語訳『源氏物語』のオーディオドラマの朗読を、三田さんが担当したことだった。
「私は54歳のときに子宮体がんが見つかったのですが、闘病を終えて1〜2年したころにご縁をいただいたんです」
三田さんは紫式部として物語の朗読を、中村橋之助(現・中村芝翫)が光源氏役を担当した。「ほかにも沢口靖子さんが紫の上を担当したり、総勢240人もの出演者により寂聴さんの54帖に及ぶ源氏物語を読み切るというものでした。がん闘病後、初めての大仕事だったので不安もありました。でも、足かけ3年に及ぶ長丁場でしたが、ワクワクしながら寂聴さんの物語の世界に入ることができ、続けるにつれ病気のことも忘れ、CDにして115枚分の録音を終えたときは、すっかり元気になっていました」