「ずっと私をたしなめてほしかった」三回忌追悼企画“いま寂聴さんに願うこと”
制作発表会見は、寂聴さんと共に臨んだ。
「会見後の控室で、誰かが『オーディオドラマのCDは全巻セットで定価が34万円もする』と言ったんですね。それを聞いた寂聴さんは『あら高いわねえ。私なんて一生懸命書いているのに、本は1冊2千〜3千円くらいなのよ』と笑っていらして。そんなユーモアとかわいらしい笑顔で、場の雰囲気が一気になごみました」
寂聴さんはまるで桜のようだと三田さんは語る。
「何百年も生きてきた大木に、爛漫として咲く花で人々に華やぎを与え、そして潔く散る姿でも人を魅了するのですから」
不倫や子供との別れなど、人生の労苦を作家として作品に書き記し、瀬戸内寂聴という桜を咲かせてきたというのだ。
「いつの間にか、私も女優を始めて63年になります。その間にはつらいこともありましたが、“すべて糧になるんだ”と思えたのは、寂聴さんの生き方を見てきたからだと思います。
ただ一つ心残りは、2人きりでお話ししたことがないこと。お化粧もせず、寂庵でお酒でも飲みながら、いろんな悩みを聞いてもらったりしたかったですね。きっと寂聴さんは『あなたは、そのままでいいのよ』と、笑って勇気づけてくださると思います」