ハーブ研究家・ベニシアさん夫の梶山正さんが明かす「最後の日々」〈1〉有名になった妻との間にくすぶっていた“わだかまり”
はベストセラーに。山岳写真家の梶山さんも、撮影と日本語への翻訳を担当した。
その2年後に放送が始まったのが、NHKの『猫のしっぽカエルの手』。ベニシアさんら家族の、大原での暮らしを10年以上にわたり紹介し、およそ120本の番組が制作された。NHKでも異例のヒット番組だった。
築100年を優に超す古民家で、自然に寄り添いながら、手作りを旨としたベニシアさんのライフスタイルは、同世代の女性を中心に、多くの人々の共感を呼んだのだ。
「散らかったままやけど、ま、ええか。そのほうがリアルやろ」
こう言って、梶山さんが招き入れてくれた古民家。
玄関脇のテラスに藤棚、キッチンの壁に貼られたタイル、その真ん中に鎮座する薪ストーブ、アンティークの棚には手製のハーブティーの缶が並んで……。番組や書籍ですっかり有名になったベニシアさんの家は、ほぼ往時のままのようだ。
以前と異なるのは、かつて家族が食卓を囲んでいた和室。その床の間の前に遺影が飾られ、位牌と、その横に小さな骨壺が置かれていること。
「27年前、まだ幼なかった息子の悠仁を連れて家探しをして。ベニシアは里山に囲まれた大原の、この古い民家を見つけたとき、いきなり言ったんですよ。