GACKT 20年前の初自伝『自白』で明かしていた「白血病の彼女との悲恋」
だから、車で無茶なんかできたんだと思う。
彼女に泣かれて、僕は彼女を傷つけたことに気づいた。
本当に何をやっているんだ、俺は……。
それから二度と、僕は車で無茶をしない。命を粗末にすることもない。
彼女の近況は聞いている。時々、連絡をとっている。幸いなことに、病気はよくなっているそうだ。
頑張っているんだと思う。
表面的な優しさは、世の中には多い。
表面的な優しさで、相手を傷つけないようにしようというんじゃなく、そのときは相手を傷つけてでも、その後、相手が前に進めるんだったら、自分はどう思われてもかまわないというのは、すごいと思う。
長い時間がかかるとしても、最終的に相手はわかってくれるという思いでできる行為。自分が誤解されたとしても相手のことを思い、相手を信頼しているからこそできる行為。相手の背中を押すことに対して、何の見返りも求めていない決断の表れ――。それが、本質的な優しさだ。
そのことを僕は、彼女に教えられたと思っている。
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『自白』刊行から20年、今回刊行された『自白II』では波瀾万丈のアーティスト人生を歩んできた彼が50歳となった今、20年の沈黙を破って後半生を振り返っている。