ダウン症の俳優・吉田葵(17) 「七実ちゃんが言えなかった」プロのダウン症俳優が生まれた瞬間
葵は連続ドラマの撮影を、そう振り返った。
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は、中学生のときに父親を亡くし、母親も下半身不随で車いす生活、弟はダウン症という主人公の視点から家族についてつづった、岸田奈美さんのエッセイをもとにした連続ドラマ。葵は主人公の弟「草太」役だ。
制作統括の坂部康二さんに葵の起用理由を聞くと──。
「草太をダウン症ではない人が演じたら、まったく別のドラマになってしまう。そんな重要な存在だから、当事者に演じてもらいたかったのです。僕も含めて多くのスタッフも、ダウン症の人と接したことがないなか、最初は“お客さま”扱いでした。でも、それは僕たちが障がいについて知らなかっただけ。
撮影が進み、お互いを知ることで、スタッフの彼への接し方がフランクになり、ときには様子を見ながら強い口調で指示が出たりすることも。葵さんはそれに応えてくれました」
初めてダウン症の俳優をキャストに加えるにあたり、葵専属の“サポート役”を用意した。その役を務めたのが俳優の安田龍生さん(25)だ。
「葵の魅力は素直なところ。柔軟に表現することができるんです」
そう語り始めた安田さん。