ダウン症の俳優・吉田葵(17) 「『この子は将来、ドラマに出るんだよ』と話しても、絶対に信じないでしょうね」障がいのある子を持った母の葛藤
葵が草太になりきっていた証拠だった。出会ったころから葵の表現力には目を見張るものがあったと吉村さんは続ける。
「葵君は、見学に来たときから、物怖じしないで、ほかの団員に交じって踊りだすような子でした。順応性は高かったですね。私が指揮をしていると、歌を歌いながら、まねをして指揮を始めてしまう。いつしか前に出てきて、客席に向かって自分で表現しながら指揮をやってしまうことも。『私がやるより全然いいじゃない』というものがあった。表現する能力は、ダウン症の人のなかでも優れていると思いますね。
だから葵君に指揮を頼みました。30年以上合唱団を率いていますが、指揮を任せられたのは葵君だけ。葵君は誰よりも説得力のある指揮をするから、合唱団の子も誰も文句を言いません」
小学4年生から通い始めたモダンバレエでは、違う才能を光らせている。「平多正於舞踊研究所」代表の平多実千子さんが語る。
「ダウン症の人は、前かがみの姿勢の子が多いのですが、バレエの基礎として背筋が伸びていることが基本。それは口うるさく指導しました。また、バレエでは股関節や背骨の柔軟性が不可欠。体が硬かった葵君は苦労したはず。
でも、レッスンごとに体が柔らかくなってブリッジもできるようになり、脚もどんどん開くように。