86歳現役のイラストレーター・田村セツコさんが語る「母と妹のW老老介護」
さらに、発表は続く。
「私は生まれ変わったら……セツコ先生の妹になりたいです」
すると、教室のあちこちから、「私も!」という声が上がるのだった。それを受けて田村さんは、
「そしたら私は、あなたをおんぶしてあげる。もう何十年も前の話だけど、うちの妹たちも、そうやって大きくなったのよ」
その温かくもユーモラスな回答に、教室はさらにハッピーな空気に包まれるのだった。
「40人の生徒さんは、いわば自慢の娘たち。彼女たちの発想や言動には、私にとっていつも新たな発見があるの。だから先生は私じゃなくて、生徒さんたちのほう。それって、スゴイことじゃない!」
80代半ばになる現在も、日々、発見と感動の連続と話す。
その気負いのない生き方が今、多くの女性たちを元気づけている。
■7歳で終戦を迎えて。女の子はお姫様の絵を描くくらいしか娯楽はなかった
1938年(昭和13年)2月4日、東京・目黒生まれ。物心ついたときは、戦争の真っただ中だった。
小2で栃木に疎開。洋服も、すべて器用な母親の手作りだった。
「ミシンで着物をリボン付きの洋服に仕立て直してくれたり、古いセーターの毛糸をほぐして、しゃれた柄に編み直したり。