7浪して医学部、国家試験に2回落ちて53歳で医師になった女性「それでも諦めなかった理由」
「まだまだやりたいことがたくさん」と語る貴子さん(写真:永谷正樹)
ドラマを追う(全2回の2回目)。
■36歳でママ受験生に。搾乳しながら試験を受けた
短大を経ていったん東京で就職するも、体を壊し、地元の島根県に帰ってきた貴子さん。臨床心理士を目指し、2年間にわたりアルコール障害や摂食障害のセルフミーティングに関わるなかで、医師になりたいという夢が生まれる。すでに貴子さんは32歳のときだ。
しかし、その直後に、自分の夢をいちばん応援してくれた父が帰らぬ人になってしまう。父のためにも、医師になることを決意するが、そこからの道のりは険しいものだった。
「まず近所の個人塾に入って、因数分解どころか、中1の計算問題から始めました」
松江市の予備校へ行くようになり、ここでのちに夫となる前島充雅さん(47)と出会う。
「彼は横浜国立大学数学科を中退して医学部を受け直すという、つまり、医者になるという同じ目標を持っていました。ただ、年も私のほうが11歳も上で、正直、恋愛感情はありませんでした。数学を教えてもらおうという下心で(笑)私からアプローチしたんです」
ところが同じゴールに向かって共に学んでいくなかで、互いにかれ合うようになる。