医療費を手軽に軽減する“リフィル処方箋”とは?《経済のプロ・荻原博子が解説》
経済ジャーナリスト・荻原博子さん(写真:本誌写真部)
早くもインフルエンザが猛威を振るっています。厚生労働省によると、10月27日~11月2日のインフルエンザの感染者数は5万7千424人。前週から2倍以上に増え、例年より1カ月ほど早く流行が広まっています。
冬はインフルエンザを含め、病院にかかることが多いでしょう。なかには持病があって、定期的に病院に通う人もいると思います。物価高の昨今「病院代も薬代も高い」と嘆く声が聞こえそうです。
そうした医療負担を少し軽減できるのが「リフィル処方箋」です。実は2022年度に導入されましたが、厚生労働省の調査では7割以上の人が「知らなかった」と回答(2024年3月末時点)。
まだまだ認知度が低いので、改めてどんなものか見ていきましょう。
最近は「医薬分業」が進み、病院を受診後、薬の処方箋をもらって院外の薬局で薬を受け取るのが主流です。処方箋は通常1回しか使えませんが、リフィル処方箋は繰り返し使えるのが特徴です。
■慢性疾患で受診のたび同じ薬をもらっている人は相談して
リフィル処方箋の見た目は通常の処方箋とほぼ同じですが、中央よりやや下にある「リフィル可」という項目に「□」が付いています。また、チェックボックスの横に何度使えるか記載されています。
使える回数は最大3回です。1回目は病院で処方箋が出た日から4日以内に薬局で薬をもらいます。これは一般の処方箋と同じですが、リフィル処方箋は薬と一緒に、処方箋が戻されます。
それを患者が保管して2回目以降に使います。
たとえば1回目に2カ月分の薬をもらったら、1回目の投薬日から2カ月後の前後7日以内に薬局に行き、リフィル処方箋を提示して薬をもらうのです。
つまり、2回目以降は病院を受診しなくてもよいということ。病院で支払う医療費や病院に行くための交通費などを節約できるうえ、混み合った病院で待たなくてもいいのもうれしいポイントです。
注意点としては、リフィル処方箋はできるだけ同じ薬局で使うようしてください。「かかりつけ薬局」を決め、病状や体調の推移がわかる薬剤師がいると安心です。
ただ、リフィル処方箋を利用できるのは、医師が「症状が安定している」と判断した患者に限られます。主な対象は高血圧や糖尿病、アレルギー性鼻炎などの慢性疾患の人です。
慢性疾患で受診のたびに同じ薬をもらっている人は、リフィル処方箋が使えないか、医師と相談するといいでしょう。
加えて、処方薬はもらう薬局によって値段が変わります。病院のすぐ近くにある“門前薬局”やチェーン店の薬局などは「調剤基本料」が安い場合が多く、薬代の節約につながります。かかりつけ薬局を選ぶ際の参考にしてください。
高市早苗首相は物価高対策を最優先課題としていますが、いま苦しい家計がすぐに楽になるわけではないでしょう。私たちは医療費や薬代など小さな節約を積み上げて、家計の自衛に努めましょう。
【PROFILE】
おぎわらひろこ
家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数