「驚くほどわかりやすい」辻元清美氏 波紋呼ぶ高市首相の“台湾有事”発言の解説と“提言”に集まる称賛
辻元清美(写真:時事通信)
中国との緊張を高めている高市早苗首相(64)の「台湾有事」発言。議論がわかれるなか、立憲民主党の辻元清美氏(65)が11月12日、論点を整理した解説をXに投稿して話題となっている。
ことの発端は、7日の衆院予算委員会で立憲民主の岡田克也元外相(72)から台湾を巡ってどのような状況が日本にとって「存立危機事態」にあたるのかと質問された際の高市氏の見解だ。
高市氏は、「”戦艦”を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えたのだ。
「日本は、長らく憲法第9条の下で、自衛隊の武力行使を”自国を防衛するための必要最小限度”に限定してきたため、集団的自衛権の行使は憲法上許容されないという解釈を維持してきました。しかし、’15年の平和安全法制の成立により、政府は憲法解釈を変更し、限定的ながら集団的自衛権の行使を容認しました。
”存立危機事態”とは、同盟国に対する武力攻撃が”日本の存立”を脅かす事態を指します。その場合、日本は自国が直接攻撃されていなくても、集団的自衛権に基づき、自衛隊を出動させて”他国を防衛するため”に武力を行使することが可能になります。
アメリカや日本の歴代政府のみならず、故・安倍晋三氏ですら首相在任時は明言を避けて、戦略的にあいまいにしてきた”台湾有事が存立危機事態にあたるか”について、高市氏は従来の見解を踏み越えた発言をしたということです」(全国政治部記者)
この高市氏の発言に中国は反発。薛剣・駐大阪総領事(57)は8日、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」とXに投稿。中国外務省の林剣副報道局長(48)も「内政干渉だ」と、日本に対し猛烈に抗議したと明かした。
日本政府も薛氏の発言に対し、中国政府に「強い抗議」と投稿削除要請を行ったと明かしており、問題の投稿はすでに削除されている。
日中が互いに抗議し合う緊迫した状況の中、高市首相は10日、7日の自身の答弁について「政府の従来見解に沿ったものだ」と述べ、発言の撤回を拒否。一方で、今後は特定のケースについて明言することは慎むと釈明した。国内外で大きな波紋を呼んでいる高市氏の”見解”について、解説したのが辻元氏だ。
辻元氏はまず、高市氏の答弁が本当に政府見解に基づいているのかに疑問を呈し、高市氏の見解の”3つの誤り”を指摘した。
《論点①》では、高市氏が言及した「戦艦」による武力攻撃について、すでに世界中で「戦艦」は現役で使用されていないと指摘。
《論点②》では、高市氏が台湾を「国」ではなく「地域」と表現したが、集団的自衛権を行使する対象は「国」と定められていること、集団的自衛権の発動は「国連加盟国」が対象だが、台湾は「国連非加盟」であることを指摘。それらの点から《台湾は存立危機事態の要件である「密接な関係にある他国」にはあたらないはずだ》と否定した。
《論点③》では、《安保法制の議論は「台湾が米国に要請をし、米国(我が国と密接な関係にある他国)の軍隊が攻撃されるか、在日米軍基地が攻撃された場合」》に限定されていたが、《高市答弁の「台湾有事は日本有事」は「台湾から日本が援助要請を受けて集団的自衛権を行使」するパターンのようで当てはまらない》と指摘。
以上3点から、《高市答弁は「総理の自論」で、政府統一見解を逸脱している》といい、トランプ大統領ですら《曖昧戦略》なのに《そもそも、公式の場で特定の国や地域を明示して「これから武力紛争になったら、うちの国も参戦します」と事前に発言する首脳がいるだろうか》と疑問を呈した。
高市総理がこれまで個人の思想信条と総理としての立場を慎重に切り分けてきたことは評価しつつ、発言の取り消しを提案。また、中国総領事の発言には抗議しつつ、《一方、これ以上の日中の関係悪化は誰を利することになるのか。中長期の視点から、「納め方」を模索してほしい》と提案した。
また、続く投稿でも《頭を整理してみた》として、台湾有事と自衛権行使の3パターンを図解。《論点③》で指摘した、高市氏が答弁で想定した、日本もアメリカも攻撃を受けていない状況であるパターン③は自衛権行使の要件を満たしていないと指摘。仮に’15年の安保法制特別委員会で《安倍総理が「邦人輸送中の米軍船舶防護」や「ホルムズ海峡での機雷敷設」以外に③を持ち出していたら、法案はつぶれていただろうと思う》と振り返った。
理路整然と高市氏の答弁の問題点を指摘し、建設的な提案をした辻本氏の投稿に、党派を超えて絶賛する声が続出している。《つじもとさん、やるやん。これは良い問題点のピックアップ。内容も妥当だし、非常に解りやすい》
《辻元さん、冷静でまとまった指摘してるなー。こういう議論は大いにやるべき》
《国会論戦を見ていたが、つじもと議員の見解は筋が通っている。
高市総理は当該答弁を撤回すべき》
《丁寧で分かりやすくて論理的》
《これは驚くほどわかりやすい。前提知識が丁寧に解説されていて、ロジカル。すべての政治ニュースに、このレベルの解説があって欲しい。前提知識を欠いた情緒的な議論が多すぎるからね》