たくろう・赤木 養成所時代から知る作家明かす“天性の間”と結成までの“不運”
(写真:きむらバンドのInstagramより)
《最高の人生かよ!!M-1チャンピオンになれました!!関わってくれた全ての皆様にありがとう!!赤木に出会えて良かったね》
12月22日に自身のInstagramを更新し、こう綴ったのはお笑いコンビ・たくろうのきむらバンド(35)。12月21日放送の漫才日本一決定戦『M-1グランプリ 2025』(テレビ朝日系)』に、赤木裕(34)とコンビを組んで出場し、優勝していた。
初めての決勝進出の勢いそのまま1万1521組の頂点に輝いたたくろうは、NSC大阪校36期のきむらと、NSC大阪校37期の赤木が`16年に結成したお笑いコンビだ。
たくろうをよく知る関西の演芸作家が養成所時代の印象を明かしてくれた。
「NSC時代のきむらさんはあまり目立ってはいませんでしたね。でも人柄は前向きで人当たりがよく仲間も多かったです。きむらさんの大きくはっきりと通る声は、客席からもよく聞こえて、芸人として申し分のないタイプの人間でした。ただコンビを組む相方に恵まれず、結成・解散を繰り返していたそうです」
一方の赤木の方は、NSC時代から強く印象に残っているようだ。
「まず赤木さんの見た目が目にとまりました。Mr.ビーンを彷彿とさせる太い山型眉は一度見たら忘れられないインパクトがあります。さらに表情も豊かで顔芸ができる。漫才中でも喋らなくても顔で表現して笑いを取れるんです。
さらに一番驚いたのが、漫才に最適な“間”を持って喋れるところでした。フットボールアワーの岩尾望さん(50)、ダイアンのユースケさん(48)、かまいたちの山内健司さん(44)など、何年かに一人の割合で漫才に最適の“間”で喋れる人間がいるんです。
この“間”は教えようにも教えられないもので、生まれつきのもの。この“間”で自然に喋れるのが、赤木さんでした。
だから相方さえ間違えなければ確実に売れると思っていました」
漫才師として高いポテンシャルを秘めていた赤木。しかし、相方に恵まれず、コンビを組んでは解散を繰り返していた。
「赤木さんがNSCにいた当時に組んでいたコンビは同期の中でも1位2位を争う人気コンビでした。でも、赤木さんは持っている才能を活かしきれてはいない印象でしたね。NSC卒業とほぼ同時期に解散し、赤木さんはしばらくピン芸人をやっていたはずです」
■漫才賞レースの常連になったたくろうが陥った“スランプ”
お笑いコンビ・チェリー大作戦の宗安聖(32)に勧められ、先輩であるきむらから赤木に声をかけて、たくろうは`16年3月に結成された。
「たちまち頭角を現し、コンビ結成3年目の‘18年に今宮戎マンザイ新人コンクールで新人漫才福笑い大賞を獲得。 ‘18年のM-1グランプリでは、結成3年目にして準決勝に進出しました。
関西で開催される漫才賞レースでは決勝の常連となりましたが、勝ち抜いて優勝するところまでは至らず。
しばらくすると、決勝にも進めないスランプのような状態に陥りました。
去年久しぶりに、『第54回 NHK上方漫才コンテスト』の決勝に残り、一点差で優勝を逃すと、芸人仲間から『お前ら、いつになったら優勝するねん、ええかげんにせえよ』と厳しいツッコミが入ったそうです」
今回、たくろうがM-1グランプリで優勝した理由についてはこう分析する。
「優勝したM-1での漫才は、これまで彼らがやってきた漫才とは似ているようでまったく違うスタイルを取り入れたものでした。これまでの彼らの漫才は、きむらさんの常識的な振りに対して赤木さんがボケて、それにきむらさんがツッコむというように、2人でやりとりをしながら、お客さんを笑わせるオーソドックスなものでした。
ところが、今回のM-1での漫才は、最初からきむらさんが普通ではありえないような無茶振り。それに対して赤木さんが『えっ、俺は何を聞かれているのか?』と戸惑い、狼狽しながらも、思いつくままにいい加減なことを口走って笑いを取る。2人のやり取りは基本的にこの1ターンで完結し、これを繰り返す新しいスタイルに改良されていました。
きむらさんは赤木さんのことを普段から、『世の中で、こんなに面白いやつはおらへん』といい、彼のことを深く理解しています。
どうしたら赤木さんを漫才の中で活かせるのかについて考え、ちょうど一年ぐらい前にふと思いついたのが、今回のM-1で披露したスタイルだったそうです。
試しにお客さんの前でやってみると、反応がよく、手応えを感じて、それ以降、約一年かけてこのスタイルを磨き上げてM-1に挑んだ結果が今回の優勝でした」
出演オファーが殺到しているというたくろう。`26年は彼らが待ちに待ったブレイクを果たす年になることだろう――。