「表舞台に戻るつもりは一切ない」司法試験合格の山本モナ フリーアナやめて挑む「弁護士の覚悟」
弁護士として特に取り組みたいのが、著作権法だという(写真:本誌写真部)
【前編】「キラキラと働く夫がうらやましかった」山本モナ46歳で司法試験挑戦を決断させた“妻でも母でもない未来”への憧れから続く
「掃除は、きっぱりやめました。子どもがいる部屋なんて、片付けても30秒で元通りになっちゃうじゃないですか。ムダだなと思ったんです。そのぶん勉強の時間に充てることにしました」
そう語るのは、フリーアナウンサーの山本モナ(49)。2025年、49歳で司法試験に合格し、再来年から弁護士として新たな人生を歩む予定だ。合格までの3年間、幼い子どもを3人抱えながら、司法試験を突破するために、生活のコストを徹底的に削っていたという。
■「完璧なスケジュール」を捨て、10分のスキマを執念で拾う
司法試験の勉強に明け暮れた3年間。意外なことに、山本は「明確な1日の予定や勉強スケジュールを立てていなかった」と話す。
「自分の希望で挑戦させてもらっていることだから、最初は予定を立てて誰にも文句を言われないように、勉強も家のことも完璧にしようとしていました。でも、子どもがいればどうしても突発的な病気や、学校からの呼び出しもありますよね。1日のスケジュールをガチガチに決めると、計画通りに進まないことがストレスになって、自分を追い詰めてしまうと気づいたんです」
そこで行き着いたのが、スキマ時間の積み重ねだった。
「子どもが寝ている深夜と早朝の時間に加えて、送り迎えの待ち時間、家事と家事の合間など。10分でもあれば、迷わず問題集を開きました。10分のスキマ時間でも6回積み重ねれば、1時間になりますから。そうやって、勉強時間を細かく積み重ねていきました」
逆に、子どもと向き合う時間は勉強を中断することも徹底した。
「子どもの具合が悪くて、勉強を1週間休むこともありましたね。
『今は子どもと向き合う時間だな』と思ったら、とことん子どもと話す。両立するというより、『今この瞬間にやるべきことはなに?』と瞬時に判断して、目の前のものに全力で向き合うことを心がけていました」
たとえ10分もムダにできない……、そんな生活の中で、真っ先に手放したのが「掃除」だ。「掃除と片づけは諦めたので、部屋に足の踏み場がない状態のときもありましたね。子どもたちに『お部屋がなんか汚い』と指摘されることもあって。そんなときは、『なんでだろうね? みんなが片づけないからだよね?』と返して、自分たちで片づけをさせました。できないことはやめる。ムリなものは諦める、です」
■試験勉強に喜怒哀楽を持ち込まない
自分自身の食事も効率を優先した。
「試験直前期、自分の食事はコンビニのおにぎりばかり。
具はツナマヨか昆布の2択でした。その瞬間の空腹具合で、どちらかを手に取るだけ。ロースクールの先生に『勉強に喜怒哀楽を持ち込まないように』と言われたことが大きかったですね。疲れたら、無機質にブドウ糖のタブレットを口に放り込む。自分のことに関しては、迷ったり悩む時間も削っていきました」
一方で、子どもたちの食事は工夫を重ねて乗りきった。
「調理家電には本当に救われました。食材を切って入れるだけで、栄養バランスのよいおかずが時間どおりにできます。でも、その余裕すらない日もあったので、そのときはお弁当やお惣菜を買っていました」
人間関係に費やす時間も、気づけば手放していたそうだ。
「ママ友にランチや集まりに誘ってもらう機会があったのですが、やはり行く時間がなく断っていました。勉強を始めてから2年間は、ママ友や友人にも司法試験受験の話はしないで、勉強に取り組んでいたんです」
いっぽうで、勉強していることを伝えてからは、ママたちは息抜きの時間など、色々とサポートをしてくれたのだという。
■“自分のための勉強”をするなかで起きた変化
こうして、子どもとの時間以外のすべての時間を勉強につぎこむうちに、子どもたちとの関係にもある変化が。
「司法試験の勉強をする前は、とにかく子どもに手をかけていて。一緒に過ごす時間も長く、何から何まで把握していないと気がすまないタイプでした。でも、勉強を始めたことで、必然的にそんな時間もなくなります。小学4年生になった長女は、私の干渉が少なくなって、少しホッとしているようでした」
そんな長女は、司法試験の勉強をする母を見て、影響を受けていた時期もあったそう。
「『ママが弁護士になって、私は検察官になる!』と言われたときはうれしかったですね。
けれど、長女は最近彼女なりのやりたいことを見つけたようで、検察官にはもうならないそうです。でも、それでいいじゃんと。彼女の人生は彼女のものですから。私自身、自分のために勉強するようになって、娘の人生と自分の人生は別物だときちんと距離がとれるようになりました」
山本に、40代以降の女性が新しいことに挑戦するために必要なことを聞くと、即座に「誰にも相談しないこと」と答えが返ってきた。
「40代を過ぎて新しいことに挑戦しようと相談すると、ネガティブな助言をしてくる方もいると思うんです。『今さら?』とか『生活はどうするの?大丈夫?』とか。それが挑戦する気持ちのストッパーになりかねないと思うんです」
山本は、全員に理解してもらうのはムリだと言う。
「みなさんそれぞれ事情がありますから。
でも、考えてみてください。挑戦して失敗したとしても、自分でその責任を引き受けられる年齢になっているはずです。失敗したら自分で責任をとればいいだけ。だから、打ち込みたい何かが見つかったときは、他人に相談せずに、自分の意思で挑戦してほしいです。みなさん、今まで夫や子どもなど誰かのために生きてきた方が多いと思うんです。だからこそ、やりたいと思ったら自分のために生きてもいいんじゃないでしょうか。やりたいと思ったときが、やりどきです!」
再来年の春からは、いよいよ弁護士としての実務が始まる。専門分野として予定しているのは、著作権法。
かつてメディアの表舞台で闘ってきた彼女には適任の分野だろう。一方で、世間が期待する「フリーアナウンサー」としての顔には、もう未練はないと話す。
「弁護士をする傍らで、表舞台に戻るつもりは一切ないです。コメンテーターとかも。だって、私がなりたくて挑戦してきたのは、弁護士だから。だからこれからは、弁護士としての仕事を全うしたいんです」
闘い抜いた3年間が実を結び、山本は新しい人生のスタート地点に立った。本当の挑戦は、これから始まる――。