「薬がなくなる事態」医療ジャーナリストが警鐘 高市政権継続で中国と関係悪化…予想される“思わぬ危機”
薬は国内の製薬会社が作っているから日本製と思っている人も多いだろう(写真:アフロイメージマート)
これまで頼っていた医薬品が、ある日、突然手に入らなくなってしまう。そんなばかげた話、と思うかもしれないが、2月8日に投開票が行われる衆議院総選挙の結果次第では……。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんがこう語る。
「昨年11月の高市首相の『台湾有事発言』に反発して、中国は1月6日に軍民両用品目(軍事と民間の両分野で利用されるもの)の輸出規制リストを公表しました。いっぽう、そんな中国に対して譲歩しない姿勢を見せる高市首相は“強い総理大臣”と、一部の支持層から高い評価を得ています。
仮に自民党が選挙に大勝すれば、解散表明会見で『大胆な政策を実行する』と意気込んだ高市首相は、中国に対してますます強硬姿勢をとることが予想されます。
そうなれば、中国も輸出規制リストを拡大するなど対抗措置を取る可能性も。その結果、日本の医療現場や調剤薬局で薬がなくなる事態が起こりうるのです」
なぜ、薬が国内から消えてしまうことにつながるのだろうか?
「日本の医薬品のサプライチェーン(供給網)は、深刻な問題を抱えています」
と語るのは、慶應義塾大学名誉教授で医療経済研究機構の印南一路副所長だ。
「医薬品は、原料製造、中間体・原薬製造、製剤化を経て、病院・調剤薬局などの医療機関に届けられ、最終的に患者に処方されます。実は、国内の製薬会社が担っているのは、有効成分である原薬に添加物を加えて、カプセルや錠剤に加工する最後の工程だけというケースがほとんど。原薬や、原薬の元となる原料のほぼすべてを海外に頼っており、そのかなりの部分を占めるのが中国のメーカーです」
薬は国内の製薬会社が作っているから日本製と思っている人も多いだろう。しかし、元をたどると、原料製造は中国が独占状態にある。日本の製薬会社は中国から供給される原料に依存しているのが実態なのだという。
「薬の原料生産のシェアを中国が占めている背景には、安い労働力に加え、緩い環境規制があります。原料を合成したり、不純物を取り除いたりする過程では、大気や水、土壌に汚染物質を残す問題が生じます。中国は製薬大国になるために、環境規制が厳しい先進国では難しい『ネックとなる工程』を担ってきたのです」(室井さん)
同じころ、日本では膨らみ続ける医療費を抑制するためにジェネリック医薬品の製造が推進され、製造コストが重視されるなか、中国への依存度が増していった。
その結果、薬の原料・原薬調達の中国依存が大きなリスクとなっていると、印南先生は指摘する。
「1990年代以降、中国が世界経済に組み込まれ、国境を越えた生産・サービス網が発展してきました。薬も分業体制で作られていましたが、不安定な国際情勢のなか“仲よしの世界経済”は終焉をむかえ、中国は『資源を武器化する』という姿勢を強めていったのです」
たとえば、2010年には尖閣諸島問題での対立を背景に中国が日本へのレアアース輸出を規制している。中国は、自国の豊富な資源を経済面で圧力をかける手段に利用するようになってきたのだ。
そんななか、中国が日本に対して優位に立つための外交カードの切り札が、薬の原料や原薬の禁輸なのだという。このカードを握られていることで生じる“最悪の事態”を予感させるケースがある。
「2019年3月、外科手術などに際し、感染予防に不可欠な抗菌注射薬『セファゾリン』が供給停止になりました。当時、日本はセファゾリンの原薬をイタリアから輸入していましたが、その主要原料である『テトラゾール酢酸』は中国の1社が世界で唯一製造していました。
中国当局の環境規制強化をきっかけに原料の供給が滞ったことが薬不足を招いたのです。国内の医療現場は手術の遅延が起こるなど、あっという間に大混乱に陥りました」(印南先生)
抗菌薬という命に関わる薬の供給体制の脆弱さが露呈したことで、日本政府も対策を講じることに。2022年には、国民の生存や経済活動に影響の大きい物資の安定供給を図る『特定重要物資』に、レアアースや半導体とともに抗菌薬が指定されている。セファゾリンの国産化の支援もスタートした。しかし、ほかの医薬品では依然として中国依存が続いている。
「原薬の調達先についてはある程度把握できますが、原料にまで詳細にさかのぼるのは困難です。ですが、日本で使われる原薬の製造方法を審査している医薬品医療機器総合機構(PMDA)の『原薬等登録名簿』には、中国の原薬業者が多数登録されている。
このことから、国内で使われている医薬品のほとんどが中国に依存していると言えるでしょう。
解熱鎮痛薬や花粉症対策の抗アレルギー薬など身近なもの、さらには降圧剤や抗がん剤など、命に関わる薬まで、『自衛隊が使う可能性がある』という言い分で輸出がストップすることもありうるのです」(室井さん)
中国が輸出規制をかけた場合に枯渇することが危惧される薬の一部が上の表だ。あくまで一部だが、これだけでも患者におよぼす影響は計り知れない。
「安定供給を図るために、政府は医薬品産業の構造を早急に仕切り直す必要があります。国内の製薬会社に対しては、薬価に『安全保障加算』といったものをのせて支援するなどの措置も必要でしょう。薬のサプライチェーンが崩れたときに何が起こるのか、そのことに対し、私たちは自然災害同様に備えておく姿勢が求められます」(印南先生)
選挙に挑む政治家には、こうした面での“安全保障”についても、きちんと考えてもらいたい――。
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