高市自民大勝利のウラで…消費税0%になっても高齢者は“家計負担が増加”のカラクリ
圧倒的な得票で自民党を勝利に導いた高市首相(写真:時事通信)
「総選挙が終わり、今後は選挙期間中に各党が訴えた“食料品のみ0%”“一律5%”など、消費税減税への道筋が注目されます。自民党や日本維新の会は来年度中にも、2年限定で飲食料品の消費税0%を目指すと言っていましたが……」(全国紙記者)
食料品消費税が0%になれば、家計の負担も減る。関東学院大学経済学部教授・島澤諭さんの試算によると、年収0~120万円の低所得層で年6万7000円、年収480万?540万円の中所得層で年8万2000円、年収1320万円以上の高所得層で年11万8000円の減税となるという。
税収は4.8兆円減ることになるが、国の支出は膨らむばかりだ。経済産業省元官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんはこう指摘する。
「防衛費がGDP比2%に引き上げられ、2025年度中にも達成しそうです。しかし、トランプ大統領は3.5%まで引き上げることを求めていると報じられています。現状よりもGDP比1.5%を上乗せするとなると、9兆円を超える財源が必要になります」
その標的のひとつになりそうなのが医療や介護にかかる税金だ。
健康保険や介護保険制度によって、加入者は一定の割合を払えば医療や介護を受けられる。原資には、加入者が払う社会保険料のほか、税金があてられている。
「さらに、自民と維新の連立政権合意書には、社会保障改革が明記され、特に維新は社会保険料の引き下げを公約としてきました。医療・介護サービスの削減といった利用者負担を増やす形の、保険料の引き下げが心配です」(古賀さん)
■高齢者の負担割合が引き上げられる
介護保険の利用者負担を増やす議論を、すでに政府は進めている。現在、介護保険の自己負担は“原則1割”。国はこれを“原則2割”に拡大する方針だ。介護医療業界専門の経営コンサルティング会社「スターパートナーズ」代表の齋藤直路さんが語る。
「介護保険は2000年に始まって以来、給付費は3.6兆円から14兆円へと4倍近くに膨張しました。
高齢化の進展に加え、介護人材の不足や、処遇改善による人件費の高騰も続いています」
これまでも、新たに一定所得の人を2割負担、現役並みの所得の人を3割負担にするなど、利用者負担を増やしてきた。「昨年11月、厚生労働省の社会保障審議会の部会で、自己負担2割の対象をさらに広げる議論がなされました。これまで所得のみで判断されていましたが、預貯金など金融資産の有無も考慮する方針も打ち出されました。2027年度の制度改正に間に合うように進めていくのではないでしょうか」(齋藤さん)
厚労省の資料によると、現行では65歳以上の被保険者の上位20%の収入の人が2~3割負担になっている。
これを上位30%に拡大した場合、単身者で年収230万円以上、夫婦で年収296万円以上から2~3割負担になるという。夫婦世帯なら月24万6000円。年金収入が多い人や、働きながら年金を受給している人は簡単に超えてしまう金額だろう。
仮に介護費用が1割負担から2割負担になるとどうなるのか。
「要介護1でデイサービスを週2回、掃除や調理など、1回45分の訪問介護を週5回受けたケースでは、1カ月あたり1万1760円、年間では14万1120円の負担増に。
要介護1で介護付き有料老人ホームを利用したケースでは、月に2万800円、年換算で24万9600円の負担増になる試算です。介護費用は亡くなるまで続くことを考えると、老後設計を見直さなければならないケースも出てくると思います」(齋藤さん)
■消費税の減税が行われない恐れも
一方、医療費についても、厳しい負担増が予想されるというのは、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんだ。
「日本の診療報酬は先進国のなかでもダントツに安く、心臓マッサージをしても医療機関に払われるのはわずか3000円と、街中のマッサージ店よりも安いのです。ところが診療報酬は簡単には上げられません。自己負担1割の患者の場合は残り9割、自己負担3割の患者の場合は残り7割の医療費を医療保険や国、自治体が負担しているからです。国の負担を減らすには、患者の自己負担割合を増やす方法が簡単なんです」
現在、高齢者の医療費の自己負担は、70歳未満までが一律3割負担。そして、70歳以上75歳未満が原則2割負担、75歳以上が原則1割負担となる。
ただし70歳以上でも現役並み所得者は3割負担だ。
「いずれ高齢者も原則3割とするでしょう」(上さん)
前出の古賀さんも同意見だ。
「衆院選は最長4年後、次の参院選までは2年半。選挙のない期間に、嫌なことは全部やってしまおうと急ぐはずです。早ければ2028年度にも、医療費の自己負担2~3割対象者の拡大が可能になります」
かりに医療費が1割負担から2割負担になると、どうなるのか。厚生労働省「後期高齢者医療事業状況報告」によると、2024年度の後期高齢者が払っている年間医療費は1割負担の人で1人あたり9万7000円、夫婦で19万4000円。2割負担となれば、夫婦で年間19万4000円の負担増となる。
どちらかがデイサービスなどを利用している75歳以上の夫婦なら、今後2年半のうちに介護費と医療費あわせて33万円もの負担増になる可能性があることになる。
消費税の減税では賄えない金額だ。しかも、その消費税減税すら危ういと古賀さんは指摘する。
「自民党の公約には《実現に向けた検討を加速します》と書かれている。官僚が見れば、一目で減税しないことだと読み取れます」
減税なしの負担増となれば、高齢者にとって地獄が待っている。
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