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《自分の名前を答えられない》“若年性認知症”の妻を持つ55歳夫がTikTokerに「わいの今の状態を見て、助かる命が絶対にある」

女性自身
《自分の名前を答えられない》“若年性認知症”の妻を持つ55歳夫がTikTokerに「わいの今の状態を見て、助かる命が絶対にある」

かおりさんと慎吾さん(写真:本人提供)



「母さん、大丈夫?」

隣に座る妻をやさしく気遣いながら取材に答えてくれたのは、岡山県在住の慎吾さん(55)。彼の人生は妻のかおりさん(55)が50歳の若さで『若年性アルツハイマー型認知症』と診断された日から一変した――。

慎吾さんはトラックドライバーとして勤務する傍ら、SNSを発信。TikTokのフォロワー数は12万人を越え、朝の情報番組『DayDay.』(日本テレビ系)でも特集されるほどの注目の“発信者”である。

「僕がもともと美味しいラーメンを紹介するYouTubeチャンネルを趣味でやっとったんです。だけど、母さんがこういう状態になってからは“母さんの今の状況”とか、“こういう人間がおるんよ”っていうことを世に伝えることは誰かのためになるんじゃないんかっていう気持ちがすごくあって」(慎吾さん、以下同)

かおりさんの病気の発覚は突然だった。

「6年前のある日、娘に頼まれて車を取りに行った母さんがなかなか戻ってこなかった。それで迎えに行ったら、母さんはエンジンのかけ方がわからなくなって路上でうずくまっていて……」

かおりさんが『若年性アルツハイマー型認知症』の診断を受けた日、慎吾さんは何かを発信するなどといった余裕は全くなかったという。


「その日(診断を受けた日)の晩だったと思うんですけど、体中に蕁麻疹がブワーっと出て、大変じゃったんですよ。たぶん、急激なストレスのせいでなったんでしょうね。子供たちも“あんなに強いお父さんがこんなになってしもうた”って、みんなで泣いて……」

それまでの慎吾さんは家事や育児のすべてをかおりさんに任せ、自分は仕事に行くだけという生活を送っていたが、

「母さんは“病気の人”になったので、危ないし、心配だから何もやらせられなくなって。僕がしなきゃいけないことが増えていきました。母さんがやっとったことがいきなりボーンっと渡された感じです」

ゴミ出しから家計の管理、近所付き合いに至るまで、すべて慎吾さんが担当。急激な環境の変化、そして将来への不安が慎吾さんを襲った。

「もう地獄、地獄ですよ。僕が死ぬか逃げるかっていう気持ちはめちゃくちゃあって……」
朝6時に出勤し、夜8時に帰宅するという過酷なドライバー業務をこなしながら、慣れない家事と介護を担う日々。
仕事中は“見守りカメラ”でかおりさんの様子を確認し、就寝中は深夜に起こされることもしばしば。そんな介護生活の中で転機となったのは、通院先の医師から勧められた若年性認知症の家族が集まる会への参加だった。

「同じ立場の、リアルに生きとる人間を目の当たりにして、すっごいパワーをもらえたんです。“わいも負けちゃおれんと。頑張っていかにゃいけん”っていう気持ちにさせられた。それでSNSを始めようと思いました。わいの今の状態を見て、助かる命が絶対にあると」

“かおりさんを晒すことになる”という葛藤がずっとあったのだが、

「“力をもらったけ、それを返さねばいけん”って母さんに話したんです。そうしたら“いいよ”って言ってくれて」

慎吾さんとかおりさんの何気ない日常のやりとりを発信するYouTubeチャンネル『若年性認知症の妻と生きる。
』は開設直後から大きな反響を呼び、今では発信の場をTikTokまで広げている。その一方で、かおりさんの病状は刻一刻と進行。かつては答えられていた認知症テストは、2年前からゼロ点になり、今では自分の名前や誕生日、住所さえも答えられず、文字を読み書きすることも困難に。

そんななか、かおりさんに“ある症状”が目立つようになってきて――。

■「父さん、もうとっくに限界は超えとるよ」

「母さんはもともと温厚なんで、まぁ甘えてくるというか、娘みたいな感じですよ。でもこの頃、思春期の娘みたいに怒りっぽくなって、“嫌だ、嫌だ”みたいな感じで。これはちょっともう厳しいなと思って」

息子が孫を連れて帰省した日も、かおりさんにその症状が強く出ていた。

「せっかく来てくれているのに、母さんは無視。
もうちょっと起きいやって言ってもやっぱり無視で、ベッドから起きあがってこない。それで母さんの肩をガッとしたら、怒ってガンガン叩かれて」

その時、息子に“自宅での介護に限界を感じている”と伝えたという。すると、

「“父さん、もうとっくに限界は超えとるよ”って言われて。それがすごく響いちゃって……。自分が相当追い込まれていることに気づかされたんです」

この一件で、過去に一度連絡したことがあった認知症専門グループホーム(共同生活介護施設)に再び電話をした慎吾さん。「“前回、空いとるって言われたけど、どうですか”って聞いたら、“ああ、もう埋まりました”って言われて。でも埋まってて、ちょっとホッとした」

だが、1週間後、施設から空きができたとの連絡が入る。

「施設の人からは“どうされますか、本当に腹積もりはできていますか”って言われました。
色々考えたんだけど、“今回はキャンセルしときます”って言ったんです。それで電話を切った後、涙が止まらんなって……。そうしたら母さんが気づいて“どうしたん、父さん”って。“もう大丈夫よ”って母さんに言って……」

かおりさんの症状がもっと進行すれば、いずれ“その時”は訪れる――。取材時も「この話をするとダメで……」と慎吾さんは涙を流した。

「母さんと一緒にいられると、安心できるから。もうちょっと、頑張ってみようかなと思っています」

65歳未満の若年性認知症の患者は、全国で約3万5000人いるとされている(東京都健康長寿医療センターの’20年のデータより)。

かおりさんに全自動洗濯機のボタンを押す順番を丁寧に教えたり、今日が何月何日何曜日なのかをクイズ形式で楽しく出題したり……。
慎吾さんは悩み、葛藤しながらもカメラの前では笑い、ありのままの二人を発信し続ける。

「わいのような人間でも頑張っとる。それを見て、今追い詰められている人が少しでも踏みとどまってくれればいい 」

暗闇にいる誰かに光を届けるために――。

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