「起こるべくして起こった」3人死亡の川崎・クレーン事故 専門家が指摘するありえない“無謀さ”
クレーンの周辺に集まり行方不明の作業員を探す消防関係者(撮影:梅基展央)
4月7日、神奈川県川崎市のJFEスチール東日本製鉄所の敷地内で、巨大クレーンの解体工事中に錘(おもり)が落下。錘の上の重機で作業していた作業員5名が転落し、3人が死亡した。
「5人は、クレーンの先に設置された、空中に張り出した400tの錘の上で、重機を使って内部のコンクリートを削る作業をおこなっていたそうです。事故から1週間となった4月15日、解体工事を発注したJFEスチールと工事を請け負った東亜建設工業が初めて会見を開いて謝罪しました。作業員は高さ35mの錘の上で作業していたようで、東亜建設工業によれば、この工事の手法は下請け会社から提案されたもので、会社としては『初めておこなうものだった』とコメントしています。
錘の落下により地面には大きな穴が開き、海に落ちたと思われる5人のうち、1人は現在も行方不明です。同日、警察は業務上過失致死の疑いで、東亜建設工業横浜支店と下請け会社に家宅捜索に入っています」(社会部記者)
空中に張り出した、約400tの錘の上での“重機で作業”と聞いて、すぐ頭にイメージが浮かぶ人は少ないはず。こうした工事手法は一般的によくおこなわれるものなのだろうか。
工事現場の施工や解体に詳しい、ものつくり大学の三原斉教授が解説する。
「4月15日の会見で配布された資料は、一般的な現状報告のみとなっており、施工計画書の内容および安全対策がまったく記されていませんでした。本来であれば、解体をおこなう際の複数のシミュレーションや、安全に関するリスクが施工計画書を作成する以前に検討されているはずですが、それも不明です」
三原氏は「そもそも、バランスウェイト(錘)の上に重機を載せること自体があってはならないことです」と断言する。「どんなに時間や費用がかかっても、安全を最優先にした計画に基づき、作業しなければいけない」として、今回の問題点を次のように指摘した。
「つまり、バランスウェイトやそれに付随する機器を地上に降ろしてから解体するとか、どうしても上空で解体しなければいけないのであれば、クレーン全体、またはバランスウェイトのまわりにしっかりとした作業構台を設置すべきです。要するに、バランスウェイトの上に乗らずに、安全な位置から作業がおこなわれるべきだということです。いくら目的物の下に頑強な支保工(支柱)を設置していても、400tの物体を解体するためには、安全を考慮した緻密な計画を検討して、もっとも安全性があり、作業性に優れた方法を選択すべきであったと考えます」
今回の事故に関して、三原氏は「素人が考えても、解体目的物の上に重機をのせて作業すると、どのような結果になるのかは明白です。つまり、マーフィーの法則どおり『起こるべくして起こった』事案ということです」と語った。
専門家から見ても、非常識な方法だった今回の工事。目的は不明だが、3人の尊い命に見合うはずはない。