《ハンマー男の減刑求める署名も》福生・少年殴打事件 “後手”と批判集める警察の対応を元刑事が「妥当」と語る理由
指名手配された職業不詳・高林輝行容疑者(警視庁ホームページより)
4月29日に東京都福生市で男子高校生をハンマーで殴打し、5月1日に殺人未遂容疑で逮捕された高林輝行容疑者(44)。当初は「殺すつもりはなかった」と容疑を否認していたが、2日から警視庁の取り調べに応じておらず、3日に予定されていた送検も拒否したという。
「事件が発生したのは、29日の午前7時半ごろでした。高林容疑者の母親が午前6時ごろ、自宅近くにある焼肉店の駐車場でたむろしていた高校生らに騒音を注意したそうです。ですが高校生らはしゃべり続けることを止めず、その場に現れた高林容疑者がハンマーで男子高校生2人を複数回殴打したとされています。
その後、高林容疑者は自宅に戻ると、駆けつけた警官らにサバイバルナイフやハンマーを見せつけ、『入ってきたら刺すぞ』などと威嚇。自宅の2階から警官と母親に向かって農薬のような液体を散布したとされています」(全国紙記者)
一時、自宅に立てこもったと見られていた高林容疑者。現場では規制線が張られ、大勢のマスコミも集結する緊迫した事態に。
警視庁捜査1課特殊班(SIT)も出動し、事件発生から4時間半後の正午すぎに警察が自宅に突入した。しかし自宅は“もぬけの殻”で、高林容疑者は午前8時前には裏口から逃走していたと見られている。
その後、警視庁は高林容疑者を公開手配。事件発生から約56時間後の5月1日午後4時すぎに、潜伏先となっていた千葉県習志野市にあるアパートの一室で逮捕した。
無事に逮捕に至ったものの、事件発生直後に犯人を逃してしまった警察の初動対応にはSNSやネットで厳しい声も散見された。果たして、警察の対応は“後手”だったのだろうか?
「警察は通報を受けて初めて事態を把握するので、現場の体制構築に時間を要したのだと思います。突入するには、容疑者は誰の住宅に入っていったのか、住宅の間取り、凶器の有無といった情報、人質がいるかどうかなどを確認することも必要です。また事件当時の状況から、ケガ人の救護が優先されていたことも予想されます」
こう話すのは、立てこもり事件の経験もある元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏。
事件当日の警察の動きや事情を、こう分析する。「たしかに警察が立てこもりと判断したことから、犯人の逃走に気づくのに時間を要したのだと思います。立てこもりであれば、人質がいる可能性を踏まえて対応し、安全確保が最優先されます。しかしSITや応援部隊が到着しないなかで、現場にいる警察官だけで自宅を包囲するのは難しいはず。
しかも、事件当時は祝日でした。警察署では土日祝日は当直体制なので、限られた人数の警察官しかいないことがほとんどです。また、事件現場と警視庁本部が離れていることから、SITの到着に時間がかかるのは当然ですし、突入するにあたって事前に状況確認や体制を組む必要もあります。SITは安全確保をした上で突入しているはずなので、警察の初動対応は何ら問題ないでしょう」
いっぽう事件が引き起こされた原因として、度重なる騒音が指摘されている。
高林容疑者は’23年10月にも自宅前での騒音に腹を立て、当時10代の少年を斧で切りつけ、2週間のケガをさせたとして殺人未遂容疑で逮捕されている(後に不起訴処分)。
しかし一部SNSやネットでは、騒音被害に悩まされていた高林容疑者家族に対して同情を寄せる声も少なくない。5月2日にはオンライン署名サイト「Change.org」で、「高林輝行容疑者の情状酌量と、暴走族による騒音行為の厳罰化を求めます」と訴える署名活動が発足。《高林輝行容疑者に対する十分な情状酌量(減刑)》、《暴走族・旧車會・違法改造車両に対する厳罰化》《高齢者・住民への騒音被害救済制度の整備》を求めており、現時点で賛同者16,325人の署名が集まっている。
事件の背景には“騒音トラブルを警察が野放しにしてきたからではないか”という指摘もあるが、小川氏は警察の“限界”についてこう語る。
「厳罰化されない法規制にも改善の余地があるでしょう。現在の法制度で警察ができることは、注意と警告に留まります。また、警察に通報することで通報者の身元が特定されやすいという問題もあり、近隣トラブルが大事になることを恐れて通報したがらない人がいるのも事実です」
メディアのインタビューに応じた高林容疑者の母親は、「息子が出てきたらトラブルになると思った」「あんなトラブルになる前に私が警察に電話していれば、こんな風に発展しなかったのに」と語っていた。
そうした母の思いを、高林容疑者はどう受け止めているだろうか。