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【磐越道バス事故】高校部活で蔓延する“素人ドライバー”の危険性を識者が指摘…背景に「部活動の抱える矛盾」

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【磐越道バス事故】高校部活で蔓延する“素人ドライバー”の危険性を識者が指摘…背景に「部活動の抱える矛盾」

衝突したマイクロバス(撮影:梅基展央)



5月6日、福島県郡山市の磐越自動車道で起きたマイクロバスの死傷事故。新潟市にある私立北越高校のソフトテニス部員20人が乗ったバスがガードレールに突っ込み、1人が死亡、17人が重軽傷を負った。

「福島県警は、バスを運転していた68歳の若山哲夫容疑者を逮捕しました。事故を起こした車がレンタカーであることや、学校側と車を用意した蒲原鉄道の証言が食い違うなど、現状は不確定要素が多い状態です。

いずれにせよ、部活動で県外遠征をする際、高校が予算を出ししぶり、バスなどの運行はプロではなく一般人に依頼することがあります。結果として事故が起きた可能性が高そうです。

部活動の予算は、私立の強豪校でもない限りかなり苦しく、似たような“素人ドライバー”が生徒の命を預かるケースは、ほかにもあるとみられます」(社会部記者)

この事故は、いわゆる“ブラック部活”の延長線上にあると指摘するのは、名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教育学部の内田良教授だ。(以下、カギカッコ内は内田教授)

「今回の件も含めて一般論になってしまうんですが、そもそも部活動というのは、学校生活のなかの“自主的な活動”と位置づけられています。
生徒側からすれば当たり前の、授業と同じような活動という認識かもしれませんが、制度上は学校主導ではないことになっているんです。これが法制度の隙間というか、不備を生み出している原因となります」

今回の事故で、発注を受けてバスの手配をした蒲原鉄道の言い分では、今回は貸し切りバスを使わずレンタカーを使って送迎をしたいと相談があり、レンタカーの手配を無償でおこない、ドライバーも営業担当者の“知人の知人”として、若山容疑者を紹介したとしている。

一方の北越高校側は、7日夜の会見で完全否定。具体的にレンタカーを手配してもらいたいとか、学校のほうから運転者を紹介してもらいたいといったことは伝えていないとしている。

「たとえば遠足や修学旅行で、白バスを使用するなどということはありえません。これらは“学校行事”に位置づけられるからです。当然、学校側も正式な手続きを経ておこなうわけです。

ところが部活というのは、手続きは個々に委ねられます。
たとえば顧問であるとか、ボランティアの監督などですね。今回の場合は、外部のバス会社に依頼するなどが顧問の裁量に委ねられているわけで、教育委員会や学校の関与が非常に薄くなるんです」

学校側の認識がバス会社とずれているのは、顧問に全権をまかせており、報告を受けていなかった可能性もある。予算を抑えたいという依頼を学校側がバス会社におこなったのかどうかは、現状では不明だが、内田教授は「よくあることだ」と指摘する。

「今回は、まだ事実関係がわからないところがありますが、できるだけ予算を低くしたいというのは、今回の件だけでなく、全国的におこなわれてきたことです。

もっとも分かりやすいのは、教員が自分の車で生徒を送迎する事例です。本当にあちこちでおこなわれてきましたが、原則禁止のはずなんです。教員委員会によって温度差はあるでしょうが、極力、やめるように言っているはずです。

しかし実質的に、地方の学校では遠征して練習試合をするときに、公共交通機関がない。
その結果、顧問や保護者が連れて行くというのが常態化し、黙認されてきたわけですね。今回の事故は、広い意味でこの類型だと思います。マイクロバスを教員が持っていたり、レンタカーを借りて運転したりするケースもありますからね。地方によっては、マイクロバスの運転講習会を教員委員会がおこなっていたりもします」

運転講習をおこなうということは、つまり“素人ドライバー”の存在を認めるということだ。

「私もこれには、『そっちに行くんかい!』と思いますよ。生徒の安全や法令遵守を最優先に考えた場合、ありえないです。運転手つきで事業登録している会社にお願いするか、そもそも練習試合をしない、などの方向に行くべきなんですよ。今回は顧問の運転ではありませんが、おそらく顧問は、中型バスを運転できる免許を所持してなかったんでしょう。
そこで別の人を頼んだのでしょうが、現象的には各地で起きていることですし、白バス行為というのも過去に事例があるんです」

2020年には、鳥取県内で高校の内部規定に違反し、生徒をマイカーに乗せる、マイクロバスを使用するなどといった事例が計275件発覚し、教員83人が処分されている。

「本来は、保護者が会場まで送るというのがいちばん手っ取り早い解決法なのですが、近隣校ならともかく、他県への遠征などになると難しい。とくに強豪チームは、バス移動が基本になります。しかし学校行事ではないので、予算は使えない。そこで顧問や関係者が送迎するという、うやむやな状態が続いてきているわけです。今回の事件の容疑者も、陸上界では有名な指導者だったということで、おそらくレンタカーのマイクロバスで送迎するという行為に、疑問を抱かなかったのだろうと思います。過去は当たり前におこなわれていたわけですからね」

今回の事故は、きちんと対価を支払い、バスを貸し切っていれば起きなかったかもしれない。部活動のための活動予算がしっかりと存在していれば防げたともいえる。


「つまり、部活動というシステムの構造上の問題なんですよ。部活動が“自主的な活動”と位置づけられている限り、そこに公費をどれだけあてていいのか、というのがよく分からないんです。自主的なものなのに、学校生活の一部として根づいているのが、部活動が抱えている矛盾なんです。

客観的に見れば、明らかに学校の活動としてやっているわけです。しかもスポーツ強豪校となると、部活の結果に応じて入学生の数が変わる、自主的であるはずの部活が学校の看板になってしまっている。そういう事例も数多いわけです。私立高などはとくに、大きな矛盾を抱えて運営しています。しかし、学校として部活には予算をあてていないことが多い。
せめて安心、安全という部分に関しては、学校法人あるいは教育委員会が最低限、保証するべきです」

私立の強豪チームでは保護者から遠征費を徴収したり、OBからの寄付などで賄ったりしているところもあるが、公立校などは部の活動費すらままならないことも数多い。部活動でも、遠征には信頼できる事業者のバスを用意するなど、学校側の努力も必要なはずだ。

「国としても、休日の指導のあり方、生徒の安全確保に関してはしっかり指導してほしいと思います。似たようなことは全国各地でおこなわれています。いずれにせよ“たまたま事故が起きた”と考えるべきではないでしょう」

生徒の安全性をないがしろにしたまま続く部活動。いまこそ改革すべきときかもしれない。

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