《カメラに中指を立て…》栃木・強盗殺人 指示役容疑者妻の逮捕後に拡散された“フェイク画像“が物議…識者が指摘する「偽情報拡散の背景と注意点」
竹前美結容疑者(写真:時事通信)
5月14日に、栃木県上三川町の住宅で発生した強盗殺人事件。侵入した複数の犯人は住人の富山英子さん(69)を殺害し、駆けつけた富山さんの長男と次男も殴るなどして負傷させた。
「司法解剖の結果、富山さんの死因は出血性ショックでした。胸などに20か所以上の刺し傷や切り傷があり、事件現場からは凶器とみられる刃物とバールが見つかりました。栃木県警は15日までに、神奈川県内に住む16歳の高校生4人を強盗殺人の疑いで逮捕。
逮捕された少年のひとりは『同じ学年の人物が仲間にいて誘われて入った。ほかの仲間は車で逃げた』と供述しており、県警は“闇バイト”などを実行役にした『匿名・流動型犯罪グループ』による犯行の可能性も視野に捜査を進めています」(全国紙社会部記者)
17日未明には、指示役とみられる横浜市在住の竹前海斗容疑者(28)が強盗殺人の疑いで新たに逮捕された。海斗容疑者は逮捕時、海外に出国する目的で羽田空港の国際線ターミナルにいたという。
さらに同日中には、同じく指示役とみられる海斗容疑者の妻・竹前美結容疑者(25)も夫と同じ容疑で逮捕。横浜市内のビジネスホテルの部屋で、生後7カ月の長女といたところ身柄を確保されたと報じられている。
容疑者夫婦は実行役の少年らに指示していたとされ、県警はさらに上位の指示役がいたとみて捜査を進めている。衝撃的な事件に世間の関心が高まるいっぽう、SNSでは容疑者夫婦が逮捕された直後に“フェイク画像”が拡散していたのだ。
17日頃からXを中心に拡散されたのは、移送中の美結容疑者と思われる人物を収めた画像。パトカー後部座席の窓際に、髪を下ろして白いマスクをつけた女性が単独で座っており、開いた窓からタトゥーが入った左手中指をカメラに向けて立てる姿が収められていた。
しかし画像に写っていた女性は、実際には美結容疑者ではなかったことが判明。あるWEBメディア記者は言う。
「そもそも、美結容疑者が送検されたのは19日の朝。報道によれば、移送にパトカーは使用されておらず、左手の甲にもタトゥーは入っていなかったといいます。実際にメディアで公開された移送時の写真や映像では、美結容疑者はほぼすっぴんでメガネをかけ、長い髪をひとつに結んで肩に流していました。また、拡散した画像の右下には、GoogleのAI『Gemini』で生成されたことを示す“ウォーターマーク”という電子透かしも確認できました。さらに、写っていたパトカーのドア部分には『警視庁』の文字が入っているように見えましたが、実際に容疑者を逮捕したのは栃木県警です。こうした相違点に気づいた人もいたようで、Xでは警鐘を鳴らす声も広がっていました」
結果的に“フェイク画像”だと判明したが、この画像を見たユーザーのなかには“引っかかった”という人もいたようだ。インフルエンサーなどが注意喚起する投稿には、こんな反応も寄せられていた。
《俺も騙された》
《まんまと騙された》
《AIマーク分かりずれー》
《これフェイク画像だったのか…》(すべて原文ママ)
■“報酬狙いのアカウントが作成・拡散”した可能性も…識者が指摘する注意点
最近では事件などが発生した際に、偽情報がSNSで拡散されることも問題視されている。
今年3月に京都府南丹市で男児が行方不明になった際も、男児と家族に関する不正確な情報がSNSで拡散したことも記憶に新しいだろう。
今回は容疑者の“フェイク画像”だったが、偽情報に騙されないためにはどのような心構えが大切だろうか?
「拡散されている画像は、私のタイムラインにも流れてきました。容疑者が女性である場合、時事ネタが投稿されやすいXでは特に拡散されやすいように思います。あくまでも推測ではありますが、報酬狙いのアカウントが作成し、拡散したのではないかと思いました」
こう語るのは、ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーの鈴木朋子さん。こうした“フェイク画像”が出回る背景などについて、解説してもらった(以下、カッコ内は鈴木さん)。
今回拡散した“フェイク画像”は、指示役の容疑者夫婦が逮捕された直後だった。短期間で次々と容疑者が逮捕され、情報が錯綜しやすいタイミングともいえるが、偽情報はどのような背景で拡散されているのだろうか。
「事件の一報が出ると、まず初めにSNSで情報を探す人が少なくありません。
人目を引く内容であれば、より拡散スピードが上がります。そこで、不正確な情報や極端な意見、今回のようなAI画像なども出回りやすくなります。
報酬狙いのアカウントにとって、情報が正確かどうかよりも、どれだけ閲覧数を稼げるかが重要。そのため、一刻も早く何らかの情報を投稿しているといいます。さらにその投稿を、他の報酬狙いのアカウントが拡散する流れができてしまっているように思います。
事業者はAIや人的チェックによって偽情報かどうかを判断し、偽情報の場合は表示回数を抑える、または投稿を削除する必要があるでしょう。偽情報を目にした人々は、反射的に拡散することは止めて、大手メディアなどの情報発信を待つことが大切です」
では“フェイク画像”だと見抜くには、どのような注意が必要だろうか?鈴木さんはこう、指摘する。
「チェックポイントとしては、ウォーターマークが入っている、日本語(漢字)がおかしい、などがありますが、生成AIで作成されたかどうかを見抜くことはもはや困難になりつつあります。
今回の件では、警察官が同乗していないなど、移送中の容疑者があのような状況で撮影されることは、日本においてあり得ないという点で偽画像だと判断できます。
いっぽう大手メディアでは、独自に撮影した写真を記事に使用することがほとんどです。そのため、似たような写真がいくつか出ている場合は、それらと見比べることによって、実際に取材で撮影された写真だと判断することができるでしょう」
SNSで拡散されている情報は目を引きやすいが、安易に信じる前に他の情報も確認する必要があるだろう。