「業界内で少し古いと思われている」あの “嫌いな芸能人”告白で冠番組終了…元局員Pが語る騒動生んだテレビ朝日の「焦りと風土」
あの(写真:本誌写真部)
タレントの“あのちゃん”ことあの(年齢非公開)が、番組内で嫌いな芸能人を“実名告白”した騒動が今も尾を引いている。
きっかけは、5月18日放送の冠番組『あのちゃんねる』(テレビ朝日系)で、番組側が用意した「嫌いな芸能人は?」という質問に対し、あのが「鈴木紗理奈」と実名告白したこと。
これに対し、鈴木は20日、自身のInstagramのストーリーズで、あのと番組名には言及せず《普通にショックやし、共演してない時に言うとか意味わからんし、それそのまま放送するスタッフも意味わからん》《普通にいじめやん》などと不快感をあらわにした。
事態を重く見たテレビ朝日は23日に公式サイトで《番組の不適切な質問および企画上の意図的な演出により、あの様並びに出演者様に不本意な発言を誘導し、かつその発言の精査が不十分なまま放送してしまいました》とお詫びを公開。全責任は番組側にあるとし、鈴木とあのの双方に謝罪する事態となった。
この謝罪を受け、あのも同日にXでこれまでの経緯を告白。これまでも「この表現は嫌です」「これはゲストの方が大変な思いするからやめてください」などと番組側に伝えていたが改善されなかったと言い、《今回の件も直前まで質問を伏せられ、……その後に発言した「僕の発言にもピーかけてくれないとお相手がかわいそうだから」という言葉も、オンエア上ではカットされていました》と暴露。番組降板の意向を伝えたことを明かした。
26日には、テレビ朝日、あのの事務所、鈴木の事務所がそれぞれコメントを公表。テレビ朝日とあのの事務所は改めて謝罪を、鈴木の事務所は、鈴木の発信は特定個人への非難ではなく「本人不在のまま話題として扱われる演出」に対する率直な思いであったと言及し、3者が同時に幕引きを図る形となった。
この一連の騒動を、元テレビ朝日のプロデューサーで、近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)などがある、コンテンツプロデューサーの鎮目博道氏に解説してもらった。
「まず、今回の騒動に関して、あのさん側には100%落ち度はないです。結局、番組側が用意した台本に沿って、あのさんは要求されていることをしただけですから。番組の要請に基づいて名前を出したのに、なぜ番組が守ってあげなかったのだろうと。これは本当によくないなと思います」
出演者が”ピー音”で音声修正を求めた場合、制作サイドが無断でその要望を無視、あるいは意図的に外すという判断をすることは通常あり得ないという。
「あるとすれば、例えば『実名を出さないと番組として成立しない』など、どうしてもピー音で隠せないと制作サイドが考えた際に、事務所に相談して許可をもらった上で放送するというケースです。
ただ、タレントさん側の意向でピー音を入れてくださいと言っている限りは、無断でそれを入れないということは絶対にあり得ません。それは完全にルール違反です。でないと出演者は安心して番組に出られません。今回はあのさん側から明確な要請があったわけではなさそうですが、それにしてもそのまま放送して大丈夫か、確認すべき内容だったと思います」
また、あのちゃんの“毒舌キャラ”を生かすために“あえて実名を出す”演出をするのであれば、それ相応のフォローが必要だったと指摘する。
「“実は鈴木さんは全然悪くないよね”って言わせるようなエピソードを挟むなり、鈴木さんが悪く見えないようなフォローを入れるべきでした。また、あのさんに対してもフォローを入れてあげないと、本気で『あいつが嫌い』と言ったような印象になってしまい、結果的に双方のタレント価値を下げる方向にしか働かない企画になってしまいました。
さらに、鈴木さんの事務所にも事前に1本電話を入れて、『こういう企画で面白くするためにお名前を出させてもらっていいですか?』と確認し、『でも、本当はあのさんも慕っているんです』と伝えておく。鈴木さんの耳に事前にそうした話が入っていれば、SNSで抗議するような事態にはならなかったはずです」
では、なぜテレビ朝日の制作陣はこのような強引な手法を取ってしまったのか。
鎮目氏は、同局の抱える“焦り”が背景にあるのではないかと分析する。
「テレビ朝日のバラエティは、業界的に“少し古くなっている”と見られている傾向があります。そのため深夜枠では、若い人に受ける新しいものにチャレンジしたいという思いが強い。そこで、地上波よりも挑戦的なAbemaのバラエティのテイストに寄せてしまった可能性があります。
ネットでバズって話題になるなら多少の炎上は問題ないという感覚は、YouTubeやネット番組ならギリギリ許容されていたとしても、深夜といえども地上波ではルール違反です。そうしたネット特有の“危うさ”を孕んだ企画を、安易に取り入れてしまったのかもしれません」
また、他局との”風土”の違いも関係しているようだ。
「日テレやフジテレビなどは出演者を立て、芸能事務所との関係を重んじる文化が強いですが、テレ朝やテレ東はどちらかといえば企画メインで進める傾向があります。良く言えば事務所の大小で態度を変えたりせず、ストイックに面白さを追求しますが、悪く言えば、芸能界の常識である事前の“根回し”やフォローが欠け気味とも言えます。
今回も、鈴木さんだから軽んじたなどということは決してないはずですが、やはり事前に事務所に連絡を入れ、フォローの演出を加えるなどの配慮があれば、これほどの騒動にはならなかったはずです」
最後に、今回の問題の根底にあるものについて、鎮目氏はこう警鐘を鳴らす。
「今回の件は、テレビの驕りや甘えというよりは、むしろ“未熟さ”によるものだと思います。企画自体が緻密に練られたものではなくノリでやってしまい、さらに業界の常識を軽視してしまった。結果として、出演者との信頼関係を壊してしまったことは、制作者として非常に未熟だったと言わざるを得ません。
一方で、閉塞感のあるテレビ業界において、若い人にどんどん新しいことにチャレンジしてもらい、自由にやってもらうことはとても大事なことです。しかし、若さゆえにやり過ぎてしまうリスクは当然あるわけで、そこをチェック、バックアップできる体制をきちんと整えた上でやらないと、今回のように一瞬で信頼を失うことになってしまいます。若い人たちが思いきり挑戦できる環境をしっかり整えてほしいなと、OBとしては切に願います」
5月28日、テレビ朝日は『あのちゃんねる』が6月15日放送回をもって終了すると発表した。再発防止が望まれる。