「吉村知事の言葉を信じたのに…」万博工事で4300万円未払い…被害業者が明かした“限界の日々”

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「吉村知事の言葉を信じたのに…」万博工事で4300万円未払い…被害業者が明かした“限界の日々”

万博の成功を強調してきた大阪府の吉村知事(写真:時事通信)



「数日前、未払い問題を抱えていた業者の男性が、自ら命を絶ったと耳にしました。まだ詳しい状況は分かりませんが、未払いに苦しむ私たちは、誰もがいつ同じ状況に追い込まれてもおかしくありません」

そう声を震わせるのは、「万博工事未払い被害者の会」代表のAさんだ。

大阪・関西万博は昨年10月に閉幕し、日本国際博覧会協会は最大約370億円の黒字を見込むと発表した。しかし、その華やかな成功の裏で、工事代金を受け取れないまま経営破綻や離婚、自死に追い込まれる下請け業者たちがいる。

報道によれば、未払いを訴える建設会社は30社以上。被害額は10億円を超えるとされる。Aさんもその被害者の一人だ。

■「図面すらなかった」万博突貫工事の実態

Aさんが現場に入ったのは開幕直前の昨年2月。
担当したのはアンゴラ館の電気工事。五次下請けだった。知り合いの業者から「間に合わないから、どうしても」と懇願され、断り切れずに参加。「娘たちに、お父さんが携わったパビリオンだよ」と自慢したい気持ちもあったという。

「大変というレベルを超えていました。図面すらまともになかった。資料は英語や中国語で、その内容自体が間違っていることも多かった。何度も工事をやり直しました」

当初の人数では到底間に合わず、最終的には約20人を投入。
連日の徹夜作業が続いた。だが、開幕に間に合わせるために必死で働いた代償として残ったのは、約4,300万円の未払いだった。

四次下請けの「一六八(いろは)建設」からは一部しか支払われず、その後の入金は途絶えた。さらに問題を複雑にしたのが、万博工事特有の多重下請け構造だった。

「本来なら、建築法に基づいて元請けに未払い分を請求できます。でも、その元請けがどこなのか分からなかったんです」

アンゴラ館の建設は、株式会社Noe JAPAN、吉択株式会社、株式会社大鵬、一六八建設へと発注が流れる複雑な構造だった。

しかも、Noe JAPANや吉択、一六八建設はいずれも建設業許可を持たないまま500万円超の工事に関与していたことが明らかになっている。さらに、一六八建設に到っては、経理担当者が1億2千万円を横領した容疑で書類送検されているのだ。
Aさんはこう憤る。

「最終的にNoe JAPANが元請けだろうという話にはなりました。でも、その頃には『もう支払いは済んでいる』と言われた。責任の所在が見えないまま時間だけが過ぎて、最後は“支払い済み”にされたんです」

■中東情勢のあおりを受け事態はさらに悪化

昨年5月、Aさんらは被害者の会を結成。吉村洋文大阪府知事(50)に対し、未払い金の立て替えや融資支援を求めた。当時、被害者のもとには「子どもが生まれたばかりなのに生活できない」「家賃が払えず退去を迫られている」といった悲鳴が相次いでいたからだ。

吉村知事は、立て替えについては「民・民の問題」として拒否した一方、記者会見などでは、「寄り添った対応をしていく」と発言。しかしAさんは首を振る。


「みんな知事の言葉を信じて金融機関へ行った。でも『融資は通りません』『そんな話は聞いていません』と言われた。あの発言は何だったのか」

加えて、頭を悩ませているのが中東情勢の影響だ。

「未払いのせいで資金繰りが厳しくなり、お金も借りられない。さらに、中東情勢による資材価格の高騰や品薄で、工事材料も思うように集まらないとなれば、仕事そのものが成り立たなくなってしまいます。本当に厳しい状況です」

今年5月13日の知事の記者会見でも、資材価格の高騰などで「未払い被害業者が二重三重の苦境に立たされている」として、支援を求める質問が記者から飛んだ。

しかし吉村知事は、「契約書がないケースがある」「債権の有無が争われている」と従来の説明を繰り返し、具体策を示さなかった。しかしAさんは、その説明自体が実態を歪めていると指摘する。


「うちは契約書も、請求書も、債権確認書もあります。弁護士からも問題ないと言われています。そういう業者は他にもたくさんいる。それなのに全部まとめて『確認できない案件』みたいにされているんです。確かに契約関係が曖昧な案件もありますが、すべて一括りにして、行政が動かない理由として利用されていると感じます」

■「俺、何か悪いことしたんかな」

未払い問題は、会社だけでなく家庭も壊している。

「自死した人もいます。離婚した人もいます。入院した人もいます」

Aさんは、これまで、あちこちから資金をかき集め、なんとか業者への支払いは済ませたという。

「“同じことを自分の下請けの業者さんにしてはいけない”という思いがありました。その代わり会社にはほとんどお金が残っていません。このままでは消費税も払えず、差し押さえを受ける可能性もあります」

Aさん自身も追い詰められている。

「妻とは15年以上一緒にいますが、本格的なケンカなんてほとんどなかった。でも今は生活のことで毎日のように衝突しています」

そして、こう漏らした。

「俺、何か悪いことしたんかな。ちゃんと仕事をして、現場を回して、必死にやってきただけなのに……」

実は、未払い問題をめぐっては救済策がまったく検討されてこなかったわけではない。昨年11月には、立憲民主党など野党4党派が、万博工事の未払い被害を受けた建設業者を救済するための「万博特別措置法改正案」を共同で提出。
万博協会が未払い債権を買い取り、その後、債務者に取り立てを行えるようにする内容で、国会での成立を目指していた。しかし、法案審議を前に高市早苗首相(65)が今年1月に衆議院を解散。これに伴い、法案は廃案となった。

Aさんは、「ようやく救済への道筋が見えたと思ったのに、政治日程に振り回されて消えてしまった」と肩を落とす。

「黒字になっているなら、せめて立て替え払いなど救済策を考えてほしい。全部を負担してほしいと言っているわけではないんです」

万博の理念は「いのち輝く未来社会のデザイン」だった。だが現実には、その万博に協力した事業者たちが生活や会社、そして命まで失いかねない瀬戸際に立たされている。

Aさんは現在、華やかな万博の裏側で苦しむ未払い業者の救済を求めるネット署名を実施している。すでに、3万筆を超える署名が集まっているという。

「一人でも多くの方に署名の協力をしてほしい。これ以上、犠牲者を出したくないんです」

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