高市首相“中傷動画問題”音声公開も「有料」ゆえ確認せず…高まる野党のヤジに与党からも“援護射撃”ナシ
2026年6月4日、衆院予算委員会に出席した高市早苗首相(撮影:長谷川新)
「野党の事前通告に答えるための費用が、いつから自腹になったんですかね」
そうあきれたように漏らしたのは、かつて国会対策委員を経験した自民党のベテラン議員だ。
国会で再び火を噴いたのは、高市早苗首相(65)が昨年の自民党総裁選と、2026年2月の衆院選で、ライバル候補や野党を中傷する動画をばらまいたとされている“中傷動画”疑惑だ。
「『週刊文春』が、高市首相陣営がライバル候補や野党へのネガティブ動画を、SNSで大量拡散した具体的な手法を報じました。実業家の松井健氏が、高市首相陣営から依頼を受けたという内容が掲載されています。20台ほどのスマホを用意し、スマホ1台につき複数のアカウントを作成、AI生成した動画を、1日100本から200本も投稿・拡散させていったとしています。
しかし松井氏は、YouTubeチャンネル『No Border News』に生出演し、『(高市事務所からの)依頼という形ではなかった』『具体的な指示があったわけでなく、私自身が動画を作ったほうが、総理・高市陣営にプラスになると思って、自ら主導してやった』などと語っており、真相は不明です」(政治担当記者)
6月3日、「文春オンライン」は、高市首相陣営の公設第一秘書・木下剛志氏と松井氏が、ZOOMで会議をしていたとして、その音声を公開した。
6月4日、衆院での質疑で、中道改革連合の伊佐進一議員(51)が、高市首相にZOOM会議の音声データについて確認を求めた。ところが首相は「前日の台風対応や国会答弁の準備で、ほぼ徹夜だった」と説明し、音声を確認していないと答弁。
さらに場内をざわつかせたのが、その後のひとことだった。
「ご指摘のオンラインを確認しようと思ったら、会員制の有料オンラインなんですね」
「週刊文春電子版」が有料サービスであることに言及し、これまでの報道内容から、有料会員になる気はなかったとの趣旨を述べたのだ。野党席からは一斉にヤジが飛んだ。首相も「ヤジはやめていただきたい」と強い口調で応酬したが、与党席からは援護射撃も聞こえず。傍聴していた政治担当記者によれば「首相の後ろに座る閣僚たちは、苦笑いを浮かべるばかりでした」という。午後には、同じ会派の長妻昭議員(65)が再び追及に立った。今度は問題の音声そのものを提出し、確認を求めたのだ。しかし首相は、第三者から提供された音源を聴取することは「週刊文春電子版」の利用規約に反するとの認識を示し、音声ではなく文字起こしだけを確認したと説明。
そのうえで「報じられた中傷動画に関する話し合いではない」「文字起こしだけでは、木下秘書本人かどうか判別できない」と主張した。
もっとも、この説明で疑惑が晴れたわけではない。問題の核心は、5月11日の国会答弁にある。高市首相はその際、自身も木下氏も、動画制作者側と面談したことはないと認識している、と答えていた。かりに音声の当事者の一方が木下氏本人であることが証明されれば、首相答弁との整合性が問われることになる。
松井氏を知る関係者はこう語る。
「首相陣営は、映像を切ったZOOM会議だから、音声以外の証拠は出てこないと思っているのかもしれません。しかし松井氏のグループは、通話履歴から映像、位置情報まで、徹底して保存することで知られています」
真偽はともかく、当事者側に強い不満が残っていることだけはたしかなようだ。
首相は「音声を確認していない」と繰り返すが、問題は音声の存在そのものではなく、国会答弁と事実関係が一致しているのかだ。野党が追及を続けるなか、疑惑の火種はむしろ大きくなりつつある。