《おことばを受け止めるべき》天皇陛下 小池都知事、橋下徹氏も続々発信中…異例のご発言が広げた波紋
政界を引退した橋下徹氏。与党が進める皇室典範の改正案には批判的だ(写真:共同通信、2015年12月18日)
今月10日にまとめられた皇族数の確保に関する「立法府の総意」。政府に伝達され、皇室典範の改正案を作成する作業が行われている。6月19日、木原稔官房長官は衆院と参院の正副議長に報告を行った。
「木原官房長官はこの日の記者会見で、両院の正副議長に皇室典範改正の骨子を伝え了承されたと述べ、改正案の要綱の作成に進むことを明らかにしています。政府側が正副議長に報告したのは、国会の取りまとめとの食い違いを防ぐためとされています。
しかしじつは、この日までに正副議長は水面下で集まり協議を行っていて、その場でも出席者の一人から、“未解決の課題を解消しながら要綱を作成するべき”という意見が出ていると聞きます。
こうした背景には野党の反発や国民世論への配慮という点もありますが、やはり天皇陛下によるおことばの影響もあるようにも感じています」(全国紙政治部記者)
天皇陛下の異例のご発言があったのは11日、オランダ・ベルギー公式訪問を前に臨まれた記者会見だった。女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案、旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案の2つを了承した「立法府の総意」が前日に取りまとめられており、この議論の受け止めについても質問が及んでいた。
陛下は、「制度に関わる事項については私から言及することは控えたい」と述べたうえで、皇室のあり方や活動の基本が「国民と苦楽を共にすること」との考えを改めて強調し、そのうえで「皇族数の確保のあり方についての議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」とおっしゃったのだ。
皇室担当記者はこう話す。
「天皇陛下は直近の記者会見でも、皇族数の減少について質問されていますが、“制度に関わることについては言及を控えたい”と述べるにとどめられてきました。それだけに、今回のご発言自体に、陛下がお気持ちを込められていないはずがないのです。
陛下は昭和、平成と象徴天皇のあり方を受け継いでこられましたが、記者会見で改めて言及されたのには、現在の皇室のご活動やそもそもの原理原則と、国民の反発も大きい“養子案”が両立するのか、というお考えを示されたようにも拝察しました。宮内庁長官や次長も連動するかのように陛下のおことばの趣旨を発信しているわけですが、木原官房長官も12日の記者会見で『コメントは差し控える』と語るにとどめているように、政府・与党側の反応は乏しいままです。この点についても批判が上がっているのです」
■小池都知事、橋下徹氏が続々と発信を
沈黙するかのような対応を示す政府・与党。だが永田町の外からのプレッシャーも高まっている。
6月12日、東京都の小池百合子知事は定例記者会見で、陛下のご発言について言及したのだ。
「小池氏は会見の質疑応答で『立法府の総意』に関して問われ、『国民が納得するような形での法改正が必要ですし、今後の議論に注視をしていきたい』などと述べ、『天皇陛下がおことばを述べられておられるように、まさに国民の理解が得られるものに、というそのおことばについては、しっかりと受け止めるべきだというふうに思っております』とも発言したのです。
さらには、地域政党・大阪維新の会と国政政党である日本維新の会を創設した元大阪府知事・橋下徹氏も、自身のXなどで鋭く政府や与党、保守派の動きを批判しているのです」(前出・皇室担当記者)
橋下氏は男系男子による皇位継承を優先すべきとしながらも、女性天皇や女系天皇を容認する考えも示してきた。かたや日本維新の会は、政権与党として、昨年締結した自民党との連立合意でも旧宮家の男系男子を対象とした“養子案”を強く主張している。
橋下氏は15日にXに、陛下のご発言と伝える記事を引用しながら、
《太平洋戦争では国体護持のために国民に大犠牲。今度は男系男子絶対護持のために生身の人間である皇族を犠牲。国士気取りの保守派がやることは変わらんな》
と投稿した。さらに20日、《「愛子さま天皇」論は不遜の極み》と題した同日付の産経新聞のコラムに対して、
《男系男子を絶対主義を貫くことで、皇室に入る女性は男子出産を強制される。
皇室は養子縁組を強制される。現代社会おいてこんな野蛮なことがあっていいのか。これが日本の象徴か?》
と、男系の女性天皇を男系男子が不在の際には認めるべきという主張も交えながら、政府・与党が進める皇室典範改正の方向性について批判したのだ。前出の政治部記者はこう語る。
「橋下氏は現在、弁護士としてや、政治評論家として活動しています。政界を離れて10年以上たった今も、なお慕う大阪維新の首長・議員もいて、橋下氏の一連の主張が日本維新の会の姿勢に影響を与えない可能性はゼロではありません。しかし一方で、選挙で選ばれていない元政治家が影響を及ぼす現状に反発する議員も少なくなく、いっそう自民党と足並みをそろえ、かつ強硬な保守派に訴える方向に、日本維新の会の執行部が舵を切っていくことも考えられます。
いずれにしても、自民党と日本維新の会、そして保守派の論客たちが男系男子の皇位継承の堅持、養子案の有効性を訴えれば訴えるほど、陛下がおっしゃったような“国民の理解”からほど遠いスタンスになっていくと、嘆く両党の関係者も出始めています」
陛下が述べられたおことばの波紋。
高市政権と自民党、日本維新の会は、このまま国民の理解を得ようとしないまま、皇室典範改正に突き進むのか。