ホルムズ海峡、開放の兆しも再封鎖発表“白黒パッケージ”カルビーほか日本企業に聞いた「影響と対応」

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ホルムズ海峡、開放の兆しも再封鎖発表“白黒パッケージ”カルビーほか日本企業に聞いた「影響と対応」

覚書に署名したトランプ大統領とイラン代表(写真:時事通信)



ようやくホルムズ海峡は解放されるのか――。

6月17日、米国とイランは戦闘終結に向けた14項目の「覚書」に署名、海上封鎖の終了を宣言した。21日には、スイス中部のビュルゲンシュトックで、両国の代表団による本格的な協議も始まった。

「覚書によれば、米国とイランはレバノンを含む全戦線での軍事行動の即時かつ恒久的停止を宣言し、最大60日以内に最終合意を目指すとしています。また、米国が海上封鎖を30日以内に解除し、最終合意後30日以内に周辺から軍を撤収する一方、イランはホルムズ海峡における商船の航行を60日間、無償で保証し、機雷除去などにより海上交通の正常化をはかるということも明記されています。

しかし、イスラエルがレバノンの親イラン勢力ヒズボラを攻撃し、トランプ大統領がイラン再攻撃を示唆したことにイランが反発。協議の直前に、ホルムズ海峡を再び封鎖したと発表しました。合意が実行されるまでには、まだまだ不透明な要素も残っています」(政治担当記者)

合意の行方をジリジリとしながら見守っているのが、ホルムズ海峡封鎖による原油やナフサの供給不足で、価格高騰の影響をもろに受けた多くの日本企業に違いない。
そこで、本誌は各企業に緊急アンケートを実施、ホルムズ海峡封鎖の影響や、その対応策について聞いた。

■カルビー

5月下旬から「ポテトチップスうすしお味」や「かっぱえびせん」など、主力14商品のパッケージを従来のカラー印刷から白黒へ切り替えると発表して、注目を集めたのがカルビーだ。商品パッケージの印刷インクには、原油の精製過程で製造されるナフサ由来の有機溶剤が使われているためだ。原料供給の見通しが立たないため、今後も「白黒パッケージ」の包装は続けていくとのこと。

「当社の2色パッケージの取り組みにつきましては、これまで公表させていただいておりますとおり、原材料調達環境の変化を踏まえ、商品の安定供給を最優先とした対応として実施しているものです。(海上封鎖解除など)政府の対応等に関する見解につきましては、個別企業としてコメントする立場にはないことから、回答は控えさせていただきます」(広報担当者)
■日清製粉ウェルナ

カルビー同様、ナフサ由来の印刷インクの供給不足、価格高騰から「マ・マースパゲティ」などのゆで時間を表記するテープを赤字から無地に変更したのが、日清製粉ウェルナだ。

「本年8月1日納品分より、パスタや乾麺製品等において価格改定(値上げ)を実施させていただきます。中東情勢悪化の影響による包装資材費上昇の影響も一部含みますが、その他にも原材料費や物流費等の影響もあり、複合的な理由によるものです」(広報担当者)

麺を束ねる結束テープを無地にしたのも対応策のひとつだった。


「『マ・マースパゲティ』の結束タイプ、『滝沢更科信州そば』等乾麺の一部製品において、麺を束ねる結束テープに印刷されている茹で時間の表記や文字・模様を『白無地』に変更しました。

結束テープの供給を受ける資材メーカーから、印刷インクの調達が不安定になったことにより印刷入り結束テープの安定供給が困難になったとの申し入れを受け、製品の安定供給を優先させるため結束テープの仕様を変更しました。

スパゲティについては、結束テープへの茹で時間の印字が無くなり消費者の皆さまにはご不便をおかけしますが、外袋には変わらず茹で時間を明記しており、そちらを参照いただきたく存じます」(同前)

ホルムズ海峡封鎖解除となれば、対応は変わるのか。

「現時点では上記結束テープの印刷の変更(元に戻すかどうか等)については未定でございます。様々な報道もあるため明確に見通すことは難しく、引き続き状況を注視し、製品の安定的な供給のために必要な対応を検討してまいります」(同前)

■出光興産

ホルムズ海峡封鎖の影響を直接、受けるのが、石油元売り大手だ。出光興産は海上封鎖後、日本関連の原油タンカーとして初めて同海峡の通過に成功し、5月25日、サウジアラビア産原油約200万バレルを積載して日本に帰港している。背景には1953年の「日章丸事件」へのイラン側の“恩義”があると言われる。英国による海上封鎖で経済的窮地に陥ったイランへ、出光興産の創業者、出光佐三がタンカー「日章丸」を派遣。
イラン産石油を日本に輸送したというものだ。

自力で原油を調達しただけに政府への言い分もありそうだが、本誌の取材に同社広報部は「質問への個別回答は控えさせていただきます」と前置きして、こう答えた。
「当社としましては、引き続き中東情勢や原油市場の動向を注視しながら、原油の安定調達と国内への安定供給に万全を期していきます」

■ライオン

「原油価格高騰によって、今後コストの上昇を見込んでいます」(広報部)と、ホルムズ海峡封鎖の影響について答えたのがライオンだ。ナフサから作られる界面活性剤などの調達見通しが不安定になり、新商品の発売延期を決めている。では、どんな対策を取っていくのか。

「コスト上昇が見込まれるため、高付加価値品の構成割合を高めるとともに、コストダウン施策を推進しております。(ホルムズ海峡封鎖解除となっても)上記の対応を継続してまいります」(広報部)

封鎖解除前の状況に戻るのはいつか。

「当面は不透明な状況が続くと思われますので、引き続き動向を注視してまいります」(同前)

■いとう王子神谷内科外科クリニック

原油不足の影響を受けたのは企業ばかりではない。
日本の医療現場にも、深刻な影響が起きている。まず医療機材が調達しづらくなったと、いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長が語る。

「点滴のルート(管)、手袋(ニトリル=処置可能な厚手の合成ゴムのもの)が入手困難となり、高騰しました。針(留置針)が一時入手困難となり、今もビニール(内視鏡時に患者さんをカバーする)が高騰し、入手困難です」

その対応策として「手袋を片手だけにする、手袋を節約し、ビニール袋で掃除」をあげた。ホルムズ海峡封鎖が解除されても、こうした対応を続けざるを得ないという。

「すぐには発注できないし、値段は高くなったまま。経営への影響はまだ続きます。しかし価格転嫁はできません」

いつから封鎖前の状態に戻るのか。


「輸液セットの値段は、高くなったままでしょう。手袋の値段が下がるのには、1、2年はかかります。それまでは節約していきますが、おそらく自分とスタッフの給与を上げることはできないでしょう」

そして、封鎖解除についてこうつけ加えるのだ。

「医療を脅かす不毛な争いで、我々は暗闇のなかにいます。そこから、やっと少しだけ光が見えてきています」

まさに“不毛な争い”の終わりは、まだ見えない――。

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