「断末魔の叫びとならないように」カンヌ受賞の映画監督 高市首相が“お祝いコメント”も…日本政府の文化政策に呈していた苦言
高市早苗首相(写真:時事通信)
6月25日、国立美術館の映画専門機関である「国立映画アーカイブ」が、支援金額1億円を目標に掲げたクラウドファンディングを開始したことが波紋を広げている。
同機関は、‘52年に設置された国立近代美術館の映画事業に端を発し、’18年に独立行政法人国立美術館の6番目の館として設立された“日本唯一の国立フィルムアーカイブ”として知られる。文化遺産・歴史資料として国際的に価値の高い映画を収集・保存・展示し、書籍やポスター、スチル写真といった映画関連資料も網羅的に保有している。
「今回のクラウドファンディングの背景には、深刻な予算不足が関わっています。今年3月、文化庁が国立の美術館・博物館に『収益ノルマ』を定めたことが報じられ、物議を醸しました。‘29年度時点で自己収入割合が40%を下回るなどした場合、『社会的に求められている役割を十分に果たせていない館』として、“閉館”も含めた再編の対象になると言われています。
こうした背景から、今年度から文化庁から各美術館に分配される運営費交付金配分額が激減。なかでも国立映画アーカイブは、売上を見込んだ美術作品の展示というよりは“映像資料の保存”に重きを置いている機関であるため、自力で収益ノルマを達成することが困難なのです。
同機関としても、クラウドファンディングは苦肉の策としての決断だったのではないでしょうか」(全国紙文化部記者)
クラウドファンディングのサイトには、55人の映画人からの応援メッセージも掲載。そこには役者からは香川京子(94)、倍賞千恵子(85)、岡田茉莉子(93)など、映画監督からは押井守氏(74)、李相日氏(52)、山田洋次氏(94)、黒沢清氏(70)、是枝裕和氏(64)など、名だたる映画人からのコメントが。
なかでもそこで日本政府に対する“辛辣なコメント”を綴っていたのが、映画監督の濱口竜介氏(47)だった。同氏はこのようなメッセージを送っていた。
《私自身は「国立」と名のついた施設が、こうしてクラウドファンディングに乗り出すことを健全な事態とまったく思えない。それは、これほどに充実した文化を国がほとんど蔑ろにしていることの証左だからだ。このことは映画の先達である、絵画や彫刻などの美術全般においても同様だろう。我々はこの事態を、単なる「資金集め」を超えた文化そのものからの呼び声として受け止めるべきだろう。
(略)この呼び声が、断末魔の叫びとならないように。》
このコメントについて、X上では《濱口監督の仰る通りです》《激しく同感です》などという賛同の声が上がっていた。
濱口氏の監督作品『急に具合が悪くなる』(‘26年)は、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。当時、高市早苗首相(65)は、この快挙に対して自身のXで“お祝いコメント”を投稿。しかし《(この作品は)文化庁の国際共同製作支援の助成を受けたものです》という文言があったことから、一部ネット上では“受賞を自分の手柄にしようとしている”と批判の声が相次いでいた。
「政府は現在、海外で人気を誇るゲームやアニメ、音楽、映像をはじめとした“コンテンツ産業”による経済成長を画策しています。‘33年度までに計34兆円規模の官民投資を行う想定で海外展開の加速化を図っているようで、6月25日にはバンダイナムコホールディングスや集英社、スクウェア・エニックスをはじめとする15社に計115億円を補助する方針を固めたことが報じられました。
他方で現政府の文化政策は、国立美術館・博物館など、大幅な商業的利益が見込めない、ないしそもそもそれを目的としていない文化事業に対して十分な支援を与えているとは言い難い。
濱口監督の苦言は、“稼げない文化”を切り捨てようとする日本政府の文化政策に対する怒りが反映されているのではないでしょうか」(前出・全国紙文化部記者)
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