「社会がこのままではしんどい」東出昌大 “1カ月の被災生活”を通して考えた「私にとっての幸福」

女性自身
「社会がこのままではしんどい」東出昌大 “1カ月の被災生活”を通して考えた「私にとっての幸福」

東出昌大(写真:本誌写真部)



「私たちが安穏と過ごしているこの日々っていうのは、ずっとは続かない。閉塞感や焦燥感を抱えている人たちが少なくない中で、このまま生きていけるのかという不安がありました」

日本全土で豪雨を記録した台風6号「チャンミー」や、茨城県南部を震源地とした最大震度5弱の地震など、予期せぬ自然の脅威が相次いだ6月。その渦中において大地震の発生を想定した独自の暮らしを営んでいた人物がいる。俳優の東出昌大(38)だ。

6月1日、彼は自身のnoteで「東出、音信不通のお知らせ」と題した記事を公開し、翌2日から1カ月間の“被災生活”を始めると宣言した。記事によれば、この生活中は、電気、水道、ガスなどのインフラが止まっている設定で、《今ある自宅の備蓄、車に入っているガソリン、チェーンソー、斧、釣竿、鉄砲、五右衛門風呂を駆使して、1ヶ月生活を送る》という。

この宣言から数週間が経過し、6月も終わりを迎えつつある中、本誌は“被災生活で得た気づき”を本人に尋ねるべく東出が暮らす北関東の山間部に赴いた。

自宅付近に到着すると、絶え間なく流れる渓流の音が響き渡る山の中に、’24年に再婚した妻の松本花林(26)のほか、友人らしき男女数人に囲まれながら川釣りを楽しむ東出の姿が。
釣りの装備を身にまとい、’25年2月に誕生した娘を抱っこ紐で胸に吊っていた。

川釣りが一段落した後、川沿いに腰を下ろした東出は「まあ、どうぞおかけください。おかけください、地面ですけど(笑)」と促し、「何でも聞いてください」と本誌のインタビューに応じた。

現時点で被災生活はどのように行われているのか。少年のように澄んだ瞳で東出が話し始めた。

「被災生活といっても、家族と一緒に住みながら、私だけインフラが止まっている設定なんです。なので、私だけ汲んできた山の水を飲んで、食器洗いもそれ使っているし、お風呂もろくに入れないんです。

最近は、風呂の代わりに川で水浴びをしています。
もうあんまり寒くないですし、長い坂を自転車で登って、自分の体温をガチガチに上げて、そのままドバンと川に飛び込むんです。

食事も、鹿を狩って、ハンバーグを作ったり、魚を釣って夕飯にしたりしています。あと、いまは冷凍庫を使わないです。だから氷の入った飲み物が飲みたいですよね。こういう季節では、アイスクリームってやっぱり奇跡の食べ物だと実感します」

自然災害が相次いだなかで生活中のトラブルなどはなかったかと聞くと「とくに問題は無かった」という。

「台風に入りそうだっていうのは、被災生活前の情報で聞いていたんですけど、全然大丈夫でしたね。この辺りは、軽い地滑りも起こりますし、倒木もしょっちゅうですから、慣れてしまっているところもあると思います。地震の影響も特に気にならなかったですね」

東出は何かの啓蒙になればと、被災生活で学んだ教訓について語った。


「マジで備えないと震災の影響はとんでもないものになると思います。例えば、通説で“水は1日最低5Lは使う”というだけあって、とにかく水だけは欠かせません。都市部は電気止まったりしたらトイレも流せないし、排泄するための場所もなくなってしまいます。そうなったら大変ですから、都市部の人は出来るだけいまのうちから水回りの管理は始めるべきです」

■東出を照らした養老孟司氏の言葉

先行きが不透明なまま、急速に変化していく現代社会。東出も山での生活を通して、人々の生活への変化や幸せについて思いを巡らせているようだ。

「私たちは、物心ついた頃から不景気だと言われ続けてきた、いわば“閉塞感のある世代”です。AIの台頭によって仕事を奪われる人が出てくるとか、超高齢化社会が進んで一人ひとりの負担が増えるとか、そこに近年の物価高騰も重なってくる。その背景には、もちろん日本の国力の低下がある。
そうした中で、心のどこかで『この幸せな日々は、きっと長くは続かないのだろう』という予感に近い感覚があるんです。

東日本大震災が起きた’11年から15年間で、復興のために投じられた予算は約42兆円とも言われています。南海トラフ地震が起きたら、その想定額が東日本大震災の時の10倍以上になってもおかしくないと言われていて、そんな大規模な天災に見舞われた時に人々の生活はどうなるのか……。『多分社会がこのままだったら、しんどくなってくんだろうな』や『私は何を幸せだと思いたいのだろう』と考えていました」

その際に、手がかりになったのが、大ベストセラー『バカの壁』(’03年)で知られる東京大学名誉教授で医学博士の養老孟司氏の言葉だったという。「戦争もご経験なさった養老さんが、いまの日本について“天災待ち”とおっしゃっていたんです。この言葉は、これまでの歴史のなかで節目節目に巨大な天災が発生し、そのたびに社会の仕組みが変わっていくという日本社会特有の背景を意味しています。養老さん曰く、今後起きうる大きな自然災害が物質至上主義にまみれた現代日本を変えるきっかけになるのではないか、と。

私は、東京よりも田舎に越してきた時に幸せを感じる瞬間が多くなりました。
だから、もっと不便を取り入れた生活、それをさらに今後来るべき災害を想定してやっていったときに、はじめて“自分にとっての幸せ”っていうのが顕在化してくると思っていました。今回の被災生活は、自分の幸せを真正面から見つめ直す時間だったともいえるかもしれません」

“被災生活”の経験を経て、東出は次にどんな一歩を踏み出すのだろうか。

【後編】「自分で生きる力をつけたい」東出昌大老後や報酬には興味なし…山籠り生活で気づいた「1歳の愛娘に伝えたいこと」へ続く

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