「2倍、10倍に盛ることも…」花火大会の“打上数”は本当に信用できる?元花火師が明かす“実態”
「国内最多級」といわれた諏訪湖祭湖上花火大会では、打ち上げ数の公表を取りやめた(写真:Yoshitaka/PIXTA)
アメリカで建国250年を祝う大規模な花火大会が行われ、首都ワシントンの夜空に、およそ85万発もの花火が打ち上げられた。約40分間にわたる「史上最大級」のショーは、世界記録への挑戦とも報じられた。
それにしても、85万発とはとてつもない「打上数」だ。日本国内で一年間に行われる花火大会すべての打上数を合計してもそれを上回る。
とはいえ、花火大会の大きさや人気は、打ち上げられた花火の数で決まるものなのだろうか──。
「打ち上げ花火は、空に放つための『筒』に1発ずつ──地域によっては条例で1つの筒に2発入れる『重ね玉』が許可されているところがありますが──入れますが、その筒の数がいわば打上数です。つまり、打上数5000発といったら、5000本の筒が必要。
ところが、日本の花火大会で発表される打上数は、厳密な共通基準があるわけではありません。
とくに、主催者が宣伝文句として掲げる数字には、1本の筒から500発ほどの『星』(火薬の団子のようなもの)を飛び散らせる花火を『500発』とカウントしているところも。
観客誘致や他大会との差別化のため、景気づけの意味で多めに見せるケースも少なくありません。ただし、誰も数えないし、確認しようがない。だから、実際は半分ぐらいだと言われることもあります」
そう語るのは、元花火師Aさん。
もちろん、すべての花火大会で打上数の水増しが行われているわけではない。玉数を集計し公表している大会もある。ただ……
「2倍に盛るところも、10倍に盛るところもあった」(元花火師Aさん)
象徴的なのが、「国内最多級の約4万発」とされてきた諏訪湖祭湖上花火大会だ。今年78回を迎え、湖上で半円状に開く水上スターマインや、山々に反響する轟音で知られる日本屈指の大会だが、第75回大会から“全国的な傾向のなかで”打上数の公表を取りやめている。
その理由を諏訪市観光課にたずねたところ、繁忙のため回答できないとのこと。
「人気の高い花火大会だけに、日本一の打上数を掲げていたことに、やっかみもあったのかもしれません。打上数が本当なのか?と議論を呼んだことで、打上数そのものを公表しなくなったのでしょう」(元花火師Aさん)
一方、現在、公表されている打上数で国内最大級とされるのが、茨城県境町の利根川大花火大会で、発表数は3万発。地元関係者によれば、この数字は花火師が提出する玉数を集計して出しているという。
では、実際の玉数は確認できないのか。花火業界関係者はこう明かす。
「花火大会の打上数は、地元の消防署などに聞けば、正確な数はわかると思います。花火は火薬ですから、どの大きさの玉を何発上げるのか、申請が必要です。
ただ、それをいちいち確かめても無粋なだけ。花火を見る気分は盛りあがらないでしょう」
日本煙火協会の専務理事・河野晴行さんも“打上数偏重”の風潮には距離を置く。
「玉数第一主義というのは、もともと業界としてはよく思っていません。本当に正確な数を出しているところもありますから、それ自体が悪いわけではない。ただ、何でもかんでも1000発、2000発多い花火大会がいい、という世界ではありません」
河野さんが強調するのは、「内容の濃さ」だ。
「花火大会には、それぞれの土地の歴史、成り立ち、目的がある。戦災復興を願って始まった大会もあれば、水辺や山あいといったロケーションを生かす大会もあります。大玉の迫力、音楽と連動した演出、湖面に映る光、観客の頭上に広がる音の反響。
そうした要素を含めて、花火大会の個性は形づくられるのです。
主催者側が、うちの花火大会は何を売り物にしているのかを、内容も含めて発信していく。それが正しい形だと思います」(河野さん)
打上数は、たしかにわかりやすい。だが、数字はときに花火の本質を覆い隠す。数が多いから美しいのではない。夜空にどんな物語を描き、見る人の記憶に何を残すのか。花火大会を楽しむ基準は、そろそろ「何発上がったか」から「何を見せてくれたか」へ移ってもいいのではないだろうか。