「台本があったのではないか」前陸前高田市長 高市首相の避難所訪問動画に抱いた“大きな違和感”

女性自身
「台本があったのではないか」前陸前高田市長 高市首相の避難所訪問動画に抱いた“大きな違和感”

首相官邸が公開した動画には、被災者からの感謝の声しかなかった(「首相官邸」公式YouTubeより)



「高市首相を前に、避難所生活となった被災者の方が『至れり尽くせりで』とか『こんな快適な生活はない』と語る首相官邸が配信した映像を見ました。

私にはそれが本心には思えないんです。首相官邸側から、事前に何らかの注文があったのではないか、もっと言えば台本があったのではないか。高市首相を前に、もしも被災者の方が言いたいことを言えなかったのだとすると『ここは本当に日本なのか?』と、大きな違和感をおぼえました」

こう話すのは、岩手県陸前高田市の前市長の戸羽太氏(61)だ。2011年3月11日の東日本大震災で同市の死者・行方不明者は1700人以上となった。

当時就任1カ月の市長だった戸羽氏は、最愛の妻を津波で亡くした悲しみを胸に秘めて、復興に尽力。被災者の目線で市政を12年間担ってきた戸羽氏が、「大きな違和感」をおぼえたのは、8月3日に熊本地震の被災地を高市早苗首相(65)が訪問した際の動画(首相官邸公表)だ。

8月4日の時点でも、138カ所ある避難所に7538人が避難しており、酷暑のなか、エアコンもなく、ベッドもない避難生活が1週間も続く被災者もいた。


そんななか、高市首相が訪ねた避難所の部屋は冷房完備で、首相と面談した被災者は「段ボールベッドは来るし、支援物資は来るし、こんな快適な生活はない」「涙が出るほどありがたかったです」と感謝していた。

戸羽氏が、今回おぼえた違和感の正体について、あらためて話す。

「政治家が被災地を訪れるのであれば、本来、明確な目的がなければいけません。まずは、被災者の方の多くが、どのような実情のなかで生活をしているか、言ってみれば、最も過酷な環境を強いられている方々の現状こそ、視察すべきです」

ところが、高市首相が訪れたのは、段ボールベッド完備、支援物資も十分に足りている「こんな快適な生活はない」という避難所だった。

「数少ない『整った避難所』を選んで行ってしまっていると思われます。エアコンも段ボールベッドも完備の“避難所の優等生”を選んで訪問したように思えるのです」

本来、首相が訪問するのであれば「現地の状況と被災者の方々が置かれた現状を把握して、被災者の方々を勇気づける役割があるはずだ」と戸羽氏は話しつつ、「その目的さえ達成できていないのではないか」と断じる。「被災者の方には、明日が想像できないんです。半年後に暮らすお金もないかもしれない。
そんな不安で、ますます眠れない。政治家が訪問した避難所で、本当に困っていて、苦しんでいる被災者の方から『あれが足りません、これが足りません』と陳情されれば、政治家であれば、『申し訳ありません。すぐにでも、できるものから用意します』と答えるはずです。高市首相は結果的に、そのような不平不満が極力出ない場所を選んで行ったとしか思えないんです」

これは、戸羽氏が震災の遺族であり被災者として、多くの被災した市民と同じ目線で、被災者の意見に12年間耳を傾けてきた経験と実績に裏打ちされた重みある発言だ。

「私も市長時代、さんざんご意見をいただきました。被災者の方は、その悲しみや怒りは、市の職員や政治家などにしか、当たりどころがないものなんです。ひどい言葉をぶつけられることもありますが、私は職員の方々とも『ここは公務員ですから、我慢しましょうね』と認識を共有し、『それでも耐えられない場合には、ある程度は反論してもいいですからね』と、気持ちを共有してきました。

でないと、今度は職員のほうの気持ちがつぶれてしまいますから。
でも、本来、それこそ『人と人』のコミュニケーションです。そんなやり取りの中で、お互いの感情をコントロールできる部分はしてきたんです」

熊本地震の被災者の中には、10年前の地震に続き、2度目の避難生活という方もいるだろう。「10年前の教訓が生かされていないじゃないかという不平不満だってあるはず」と戸羽氏。

「そういう10年間の経過も考えたとき、訪問するのがときの首相だったら、なおさら言いたいことがある人というのは、たくさんいたはずです。だから、ふつうに考えれば、政治家が被災地を訪問するのは、罵声を浴びる覚悟で行くものなんです」

自身が被災者で遺族である前市長・戸羽氏の言葉を、高市首相はどう受け止めるだろうか?

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