【99%超が参加せず】東京の「都民投票」制度 ラインナップに疑問、低い認知度…担当者は「把握しております」
東京都の小池百合子知事(写真:本誌写真部)
東京都事業提案における「都民投票」が、SNSで注目を集めている。
東京都では、都民と大学研究者による事業提案制度(都民提案・大学提案)を実施している。2017年度から始まったもので、都民、大学研究者から寄せられた事業提案を絞り込み、都民によるインターネットなどによる投票を実施し、結果を踏まえ、事業案を翌年度の予算案に反映していくという制度だ。2026年度は7月31日から8月31日までの間、投票を受けつけている。
社会部記者が言う。
「2026年度は、投票の対象を都民提案から13件、大学提案から9件、選定し、投票を呼びかけていますが、いまいち認知度が低いようです。1人につき都民提案3票、大学提案3票の計6票まで投票できるのですが、SNS上では、そのラインナップに首をかしげる声や、やらなくていいことを聞くべきではないか、などという声も相次いでいます」
13件が選定されている都民提案だが、その一部を列記すると
《発達障害児等の保護者に適切な接し方等を教える「ペアレント・トレーニング」の導入を推進するため、専門家を養成》
《若者の投資への関心が高まる中、若年層の金融リテラシーの向上のため、金融知識が乏しい初心者でも気軽に参加できるセミナー等を開催》
《子育て世代が移動時に使用済み紙おむつを持ち歩かなくてもよいよう、公共施設等に乳幼児の紙おむつ用ごみ箱を設置する区市町村の取組を支援》
などがリストアップされている。もうひとつの大学提案では9件の提案があるが、こちらも一部を紹介すると、以下のようなものが並んでいる。
《LGBTQ+当事者が医療機関を受診しにくいという状況を改善するため、当事者や医療現場の意見を反映しながら、医療機関が配慮するべきポイント等を整理するとともに、研修実施等により適切な配慮に向けた取組を促進》
《高齢者の孤立や孤独に対し、専門研修を受けた都内の大学生がリンクワーカー(つなぎ手)となり、お薬の代わりにアート巡りや軽スポーツへと優しくエスコートする「文化的処方」を日本で初めて実装》
《行政の迅速な初動対応や住民の在宅避難判断に必要となる地震発生直後の建物被害情報等の取得に向けて、建物にIoTセンサーを設置し地震によるゆがみ等の情報を取得、クラウド上で被害推計情報を自動処理し、行政・住民にリアルタイム共有》
都民提案、大学提案、いずれの提案も、当事者や研究者からの目線で、細やかな支援などを訴えるものだが、こうしたラインナップに、Xでは否定的な意見も出ている。
《ラインナップの中に実現してほしいことがひとつも無かった。むしろラインナップされているものはすべて「やらなくてもいいこと」だと感じた。》
《逆だよ、やってほしいことではなくて、やらなくて良いことを聞いてほしい。》
異論も出ているこの「都民投票」だが、東京都に選定方法や投票数、そして、否定的な意見が出ていることなどに関して問い合わせた。これまでに100件近くの事業が採択され、予算化・実施されたという。
都の担当者が言う。
「大学提案は、大学の先生などの有識者の方々の審査、事業を実際におこなう都庁内部の各局の方に確認をいただいたうえで、選定しています。
都民提案のほうは、有識者審査はかけておらず、都庁のなかで各事業局を中心に審査をしております。いずれも実現可能性なども含め、評価しています。2026年度の投票数は集計中のため、現段階では公表できませんが、2025年度は、都民提案と大学提案を合わせて約11万票です。1人当りの投票数は5くらいになります」
「都民投票」の資格は《都内在住の15歳以上》なのだが、2026年1月1日現在の東京都の15歳以上の人口は、約1257万人。2025年度の都民投票に参加した人は約22,000人ということになるので、投票参加率はたったの0.17%ということになる。
この制度に批判的な声が出ていることや「都民投票」の認知度について聞くと、
「SNS上で、そうした批判的なコメントが付いていることは把握しております。(やらなくていいことを都民投票で実施する予定は?)基本的には、『都民投票』の制度主旨が、都民の方から新たな事業のアイデアですとか、大学の知見を活かした事業案を募集し、募集した案に対して、都民の方に選んでいただくという制度ですので、廃止すべき事業を選べというのは、制度主旨と異なってしまうので、とくに実施する予定はありません。
(2万人強しか投票していないのは少なすぎでは?)2017年度に開始した際は、あまり認知されていなかったのですが、年々、投票に参加していただく方は増えてきてはいます。
ただ、いまの数字で十分だと思っているわけではなく、2026年度も戦略的な広報を実施しておりまして、その一環として、SNSに広告を打たせていただいたりとか、都庁内のさまざまな媒体を有効的に活用して、認知を広めることに取り組んでおります。少なくとも、前年度よりは多くの方に参加していただくことを目標にやってきております」と話した。
現在、東京都在住の15歳以上の99%以上が参加していない「都民投票」が、その名にふさわしい制度になる日はくるだろうか。