小泉防衛相 退職自衛隊員の「家族支援庁」新設の動きも「幹部優先ってことになりそう」議論百出…背景に深刻な“定員割れ”も防衛省の見解は?
7月17日、衆議院予算委員会集中審議に出席した小泉進次郎防衛相(撮影:長谷川新)
8月17日、時事通信が《防衛省は退職自衛官やその家族を支援する「退職自衛隊員・家族支援庁」を早ければ2027年度に新設する検討に入った》などと報じた。
これに先立ち、防衛省は6月17日に小泉進次郎防衛相を委員長とする「退職自衛隊員・家族に対する支援の強化に関する検討委員会」の初会合を開催。米国の退役軍人省や韓国の国家報勲部などを参考に組織新設の検討を進めており、小泉防衛相はXで《退職後のサポートも不可欠》などとポストしていた。7月21日に閣議決定された「骨太方針2026」にも新たな庁の設置に向けた取り組みが明記されている。
政治担当記者が言う。
「支援庁を新設する大きな理由は、自衛隊員の成り手不足を解消するためでしょう。
2026年3月末現在、定数247,154人に対して、現員は217,701人と大きく定員割れしています。特に深刻なのは、現場で中核となる若い『士』クラスの充足率が6割を切っていることです。
高卒をターゲットとする2士採用の応募者数と採用者数は2014年度から2024年度までの10年間でともに約4割減少していますし、また、採用人数の約半数が中途退職している状況もあります。
防衛省は退職自衛官に対して、現状でも対策は実施しているものの、退職自衛隊員への支援のあり方を俯瞰して検討・調整する司令塔機能や、退職自衛隊員がワンストップで相談できるような部署がありません。また、米国の退役軍人省や韓国の国家報勲部などと比較すると退職者に対する支援が薄いのが現状です。入隊者をもっと増やし、増加している若年層の中途退職者を減らさなければならないことから、至急対策が必要だということのようです。2027年1月に召集予定の通常国会に関連法案を提出する見込みです」
7月16日、超党派の「自衛隊員・退職自衛隊員・家族を支援する議員連盟」が設立総会を開き、自民、維新の与党の他に国民民主党、中道改革連合、立憲民主党の衆参約60人の国会議員が出席するなど、政界でも後押しする動きが出てきている。
ただ、この支援庁新設の報道に対してX上には
《処遇改善やキャリア支援を本気で進めないと、今の若手は集まらないですよね。》
などと理解を示す声もあがっている一方で
《防衛省のなかでそういう部門作れば良いだけに思います》
という慎重論のほか、将・将補の将官は定年が60歳だが、それ以外は定年が55歳?58歳と若いことから、定年について
《あと5年ずつ延期してもいいんじゃないかな》
《退職自衛官って言っても幹部優先ってことになりそう》
と否定的な意見も出ている。
元幹部自衛官は今回の支援庁の新設について、こう話す。
「こうした動きはもちろん歓迎です。ただし、海外の軍人には自衛官と違って、それなりの名誉が与えられています。例えばアメリカの空港では、自衛隊の制服を着ていると搭乗などで優先的に案内されるなど、海外では軍人への敬意があります。自衛隊は正式には軍隊ではありませんが、日本の自衛官も海外の軍人のように名誉を与えられるような存在にならない限り、成り手不足の根本的な解決にはならないだろうと思います。定年を延長すればいいとう意見もありますが、はっきり言って基本的に軍隊というところは、指揮官は別として、年寄りは要らないのです。
災害派遣に出る際に60歳くらいの人が行っても若い隊員に比べれば体力的に劣るわけですから、若い隊員が必要。ですから少しずつでも待遇をよくしていかないと人が集まらないと思います。今回の支援庁新設の動きは、自衛隊員の待遇改善に向けての進歩の兆しが見えたということでしょう」
こうした意見も出ていることについて、防衛省に支援庁新設についての見解を問い合わせると、以下のような回答があった。
――一番の狙いは、自衛隊員の成り手不足の解消なのか。また、米退役軍人省の具体的にどういった点を新たに導入したいと考えているのか。
《自衛隊員の確保は政府を挙げて取り組むべき至上命題であり、現職の自衛隊員の処遇改善に加え、国防の任務を全うした退職自衛隊員や平素から自衛隊員を支える御家族も、誇りをもって、安心して生活できる環境の構築が必要です。
これまでも、若年定年制自衛官及び任期制自衛官の再就職支援や庁内託児施設の整備など、退職自衛隊員や御家族への支援を実施してきましたが、既存の取組に加えて新たな取組も進めていかなければならないと考えています。
また、米国の退役軍人省をはじめ、諸外国においては、退役軍人等の支援を専門とする組織や部局が存在しているところ、こうした例も参考に、退職自衛隊員や御家族への支援策やその推進体制の強化を検討していきたいと考えています。このため、関連する施策を一元的に企画立案し、退職自衛隊員及び御家族に対する支援を総合的かつ戦略的に推進するため、諸外国の事例も参考にしながら退職自衛隊員・家族支援庁(仮称)の設置も含めた取組の強化を検討しております。》
――この新設については、SNS上などで、「防衛省内にそうした部門を作ればいい」「定年を5年延期すればいい」「退職自衛官と言っても幹部自衛官が優先されるのではないか」などといった疑問の声も出ているが。
《新たな部門の新設など、防衛省内の組織の形につきましては、退職自衛隊員・家族支援庁(仮称)の設置も含め現在検討中のため、お答えできないことを御理解ください。
また、知識・技能・経験を豊富に備えた人材の有効活用の観点から、これまでも自衛官の定年の引上げや再任用自衛官の従事する業務の拡大等に取り組んできました。令和10年から14年までの間で、将から3曹までの自衛官の定年を2歳ずつ引き上げることも予定しています。これにより、自衛官の定年年齢は、将及び将補は62歳、1佐は60歳、2佐及び3佐は59歳、1尉から1曹までは58歳、2曹及び3曹は57歳となります。引き続き、自衛隊の精強性の確保に留意しつつ、人材確保の在り方について不断に検討してまいります。
「退職自衛官と言っても幹部自衛官が優先されるのでは」とのご指摘については、上記のように、国防の任務を全うした退職自衛隊員や平素から自衛隊員を支える御家族が、誇りをもって、安心して生活できる環境を構築することが必要であると考えており、ご懸念には及びません。》
支援庁新設が自衛隊員の待遇改善につながるものになりえるのか、今後の動きに注目が集まりそうだ。