逝去した岸惠子さんが生涯忘れられなかった鶴田浩二さんとのロマンス…叶わなかった恋から50年後に始まった“息子”との交流
日本を代表する女優のひとりだった岸恵子さん(写真:本誌写真部)
岸惠子さんが、8月7日に老衰のため逝去した。93歳だった。国民的スターで、代表作の映画『君の名は』(松竹)では主役の氏家真知子を演じ、劇中、頭部をストールで包む“真知子巻き”が大流行したことでも有名だ。数々の名作に出演し、渡仏後はフランス人映画監督と結婚し、世界に活躍の場を広げた。一方、作家としても多才ぶりを発揮した。
そんな岸さんには、生涯忘れられない恋をした昭和のスターがいた。
「鶴田浩二さんですね。2人の代表作でもある『ハワイの夜』(新東宝)は、鶴田さんが相手役に岸さんを選んだと言われています。
岸さんにとって初ロマンスを報じられた相手です」(芸能記者)
岸さん自身も、2024年に出版された著書『91歳5か月 いま想うあの人 あのこと』(幻冬舎)で、このように述懐している(以下《》内は同書を引用)。
《日本映画初の海外ロケ、『ハワイの夜』は爆発的にヒットした。ハワイの美味しい果物やアイスクリームを食べ過ぎて、細かった私に少し肉がつき、私は相手役の鶴田浩二さんと恋に落ちていた》
ところがちょうどその頃、大船撮影所の大部屋に顔を出した岸さんは、ある女性から鶴田さんには交際相手がおり、すでに一緒に暮らしていると聞かされた。
《「…………」、?っ!吃驚して、声も出せなかった》
と、2人のために作った純金のネックレスを引きちぎり恋を終えたが、この失恋が原因で、鶴田さんは自殺未遂を起こしたといわれている。その後、岸さんがフランスに渡るときには、鶴田さんの交際相手に呼び出され、帰国しないで欲しいと告げられたことなども、岸さんは同書で告白している。それほど鶴田さんの岸さんへの想いは強かったのだろう。
■晩年になって生まれていた鶴田浩二の息子との交流
鶴田さんはその交際相手と、岸さんは渡仏後にフランス人映画監督と結婚。それから50年近くの時を経て、岸さんの元へファンレターが届いたという。
その送り主のAさんの家族が語る。
「Aが岸さんの何冊もの著作を読んでファンレターを届けたら、お電話でお話しできる機会に恵まれたそうです。でも岸さんは、最初は単なる読者の一人だと思い、対応していたようです。警戒心もあり、あまり会話も弾まなかったみたいです」
ところがAさんは、電話口の岸さんに、家族が岸さんと仕事関係でお世話になっていたと話し始めた。岸さんの『91歳5か月 いま想うあの人 あのこと』でも以下のようなやりとりがある。
《「例えばどの作品に出られたの?」
「『獣の宿』とか……」
「何の役をなさったの?」(中略)
「最後に銃殺される役です」
「……え?鶴田浩二さん……?」
「私はその息子です」》
Aさんの家族が続ける。
「岸さんは絶句して、しばらく声が出なかったそうです。それで、昔の恋人の親族に会ってみたい気持ちが湧き上がったのでしょう。
すぐに待ち合わせをして会う約束をしたそうです。それからはお互いの自宅を行き来する交流が続きました。当時、岸さんが原稿を書くためのパソコンをプレゼントして、岸さんの自宅でメンテナンスをしたりしていました」
《私が憶えている鶴田浩二さんは二十代後半の若さの真っ盛りだった。待っていてくれた人は、中年もいいところ、鶴田さんのお父さんにしか見えなかった》
と岸さんは振り返っているが、どこかで鶴田さんと重ねている部分はあったのかもしれない。
「『Aさんのお宅の近くにいるから』と、いきなり電話をかけてきて、遊びに来ることもありました。ときには昔の話をすることも。鶴田さんと破局するきっかけとなった、当時の交際相手のその後のことも気になっていたようで『今どうしているんですか?』と聞くこともありました。なにより、『もし、あのとき鶴田さんと結婚していたら……』と、叶わなかった恋の行方を想像することもあったそうです」
1987年に肺がんで他界した鶴田さんも、最晩年、病床で「本当は誰が好きだったのか」という問いに、岸さんの名を挙げたと、鶴田さんの長女が自身の著書で綴っている。
いま、天国で2人はどんな再会を果たしているのだろうか――。