高市首相“結論ありき”消費税減税の波紋 制度と特例の乱造、減収穴埋めの財源未定…税調会長が苦しむ“政治的立場”
「弱者に寄り添うスタンスがない」と指摘された高市首相(写真:本誌写真部)
8月25日、高市早苗政権が打ち出した消費税減税をめぐり、自民党税制調査会(税調)の「インナー」と呼ばれる非公式の幹部会合が始まった。政府は8月5日、消費税減税案を閣議決定したため、秋の臨時国会には関連法案を提出する予定となっており、今後、日本維新の会との協議を経て、最終的には与党として税制改正大綱をまとめることになる。
もっとも、自民党内では「議論を始める前から、結論はほぼ決まっている」との声も聞こえてくる。大手紙記者が解説する。
「2027年4月から2年間限定で、消費税を1%に引き下げる予定です。さらに、その1%相当分を中小所得者に給付する。つまり、高市早苗首相が総裁選で訴えていた『消費税0%』を、実質的に実現しようというわけです。
しかし、話はそう簡単ではありません。
消費税を大幅に引き下げれば、影響を受けるのは消費者だけではありません。免税制度や簡易課税制度との関係で税額控除の恩恵を受けられなくなる、小規模な農業・漁業事業者や、食料品を対象とした減税によって利用者の減少が見込まれる外食産業にも影響が考えられます。彼らには支援策を講じる予定だそうですが、減税の影響をあげだしたらきりがないでしょう。給付対象がどんどん膨らむ可能性は十分にあります」
税制の基本は、シンプルで公平であること。ところが、今回の減税はわずか2年間の“時限措置”だ。期間が終われば現行税制に戻り、さらに元の税率へ戻す。そのため、わずか2年のために特例を次々と設ける必要が出てくる。そのひとつが、店頭などで商品の税込み価格を示す「総額表示」だ。
「2021年から義務化された制度をそのまま適用すれば、減税開始に合わせて、小売業者は表示価格を一斉に変更しなければなりません。3月31日から4月1日にかけて、店頭の表示を切り替える作業が必要になります。そこで、一定期間に限って『本体価格』の表示を認める特例を設ける案などが浮上しています。たった2年間の減税のために、制度の上にさらに特例を積み重ねていく。まさに、走りながらルールを作るような状態なんです。
そして、最大の問題はやはり、減収分の資金繰りです。財源については、年末まで結論を先送りすることが決まっています。東京都だけでも約1100億円の減収になるとの試算がありますが、そういった地方自治体の減収分をどう穴埋めするかも決まっていません。
そこを政府が補填する必要がありますが、財源も未定。結局、すべてが“結論ありき”の見切り発車なんです」(同前)
とはいえ、自民党としてはいつまでも「検討中」というわけにはいかない。その難題を一手に引き受けることになったのが、税調会長の小野寺五典(いつのり)氏である。小野寺氏は2025年10月、高市首相の“一本釣り”ともいえる形で税調会長に就任。形式上は議論をまとめる権限を持つ立場ではあるが、自身の政治的立ち位置を考えれば、今回の減税はなかなか厄介な案件だという。旧岸田派議員が語る。
「旧岸田派は財政規律を重視する議員が多く、今回の大幅な減税には慎重、あるいは反対の議員も少なくありません。ですから、小野寺氏としても難しいところでしょう。
消費税減税を無事にまとめ上げられれば、秋の改造内閣で重要閣僚として処遇されることもあります。ただ、問題は高市政権崩壊後です。もし、早期に政権が倒れるようなことになれば、次は同じ旧岸田派の林芳正政権になる可能性が十分あります。そうなれば、“高市色”がつきすぎていることが、プラスに働くとは限りません。しかし、税調会長を引き受けた以上、党の責任者として減税策をまとめなければならない。自分の立ち位置と、目の前の職務との間で苦しいところだと思います」(同前)
秋の臨時国会に向け、税調インナー会合の議論は、いよいよ正念場を迎える。