「540億円赤字でも誰も責任を取らない」失敗した“クールジャパン機構”の関係者が “新たなエンタメ国策”の座長に

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「540億円赤字でも誰も責任を取らない」失敗した“クールジャパン機構”の関係者が “新たなエンタメ国策”の座長に

7月29日に行われた、累積540億円もの赤字になったクールジャパン機構を検証する有識者会議の初会合の様子。中央は経済産業省の井上博雄商務・サービス審議官(写真:共同通信)



「反省がないところには教訓も生まれない。だから、同じ間違いを繰り返すんです」

元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明氏は、そう警鐘を鳴らす。

日本のアニメや漫画、食文化などの海外展開を支援するため、2013年に安倍政権の肝いりで設立された官民ファンド「クールジャパン機構」。政府はこれまでに約1400億円を出資してきたが、累積赤字は約540億円に達した。

経産省は2027年度予算の概算要求を見送り、同機構を廃止する方向で調整している。ところが、その一方で、経産省は8月20日、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を公表した。2033年までに日本発コンテンツの海外売上高20兆円を目指す「ものがたり大国5か年計画」を推進するという。

「クールジャパン機構が巨額の赤字を出して終了するにもかかわらず、再び“国主導”でコンテンツ産業を後押しする計画が始まったことに対しては、批判の声も出ています」(全国紙記者)

■クールジャパン機構の関係者が座長に

さらに気になるのが、新戦略を取りまとめた有識者会議の座長を務める人物だ。


「座長を務める中村伊知哉氏は、元総務官僚で、2013年には政府のクールジャパン推進会議の『ポップカルチャー分科会』で議長を務めるなど、以前から国のコンテンツ政策に関わってきた人物です。

一方、2016年から2023年までは吉本興業ホールディングスの社外取締役でした。その在任中、クールジャパン機構は、吉本興業とNTTグループによる教育コンテンツ事業に最大100億円を出資すると発表。実際の投資額は31億円でしたが、機構は2023年に撤退しています。

中村氏が投資決定に関わったことを示す資料は確認されておらず、利益相反と断定することはできません。ただ、政策を進める側と、支援を受けた企業の役員という二つの立場が重なっていた以上、経緯を説明すべきだとの声が出ています」(前出・全国紙記者)

赤字を生んだクールジャパン政策に関わってきた人物が、再び新戦略の座長に就く。この人選に、古賀さんは官僚組織の“変わらなさ”が表れていると指摘する。

「役所が何かを一度作ったら、絶対になくならないんです。
失敗した事業を廃止しても、『今度はこれまでと違う』『今回はうまくいく』と説明して、新しい仕組みを作る。そうしなければ、担当課の仕事も予算もなくなってしまうからです」

■失敗しても誰も責任を取らない

そもそも、「いままで、ほとんどの官民ファンドが失敗に終わっている」と古賀さんは指摘する。

「それは、官には民間を上回る“目利き能力”がないから。官が入る意味があるとすれば、民間にはできないことができる場合ですが、実際に官にできるのは、損をしても事業にお金を出し続けることくらいです。原資は自分たちのお金ではなく、国民の税金ですからね。失敗しても自分の腹は痛まないし、これまで責任を取った人もいません」

しかし、「この甘い姿勢がプロジェクトを失敗に導く」と古賀さん。

「日本の漫画やアニメが世界で高く評価されていることは事実です。しかし、その成功の裏には、作品を世に出せず、生活苦にも負けないで挑戦を続けてきた無数のクリエイターがいます。


寝る暇も惜しみ、全身全霊を傾けた人たちのなかから、ほんの一握りの成功者が生まれます。ところが国は、その成功だけを見て、『日本の漫画なら何でも売れる』と思い込んでしまう。それが失敗のもとなんです」

成功する作品や事業を事前に選び出すことは、経験を積んだ民間の投資家にとっても難しい。まして、失敗しても誰も責任を問われない仕組みのもとで、官僚が国費を使い、「最後に勝ち残る作品」だけを見極めることなどできないというのだ。

■「高市首相は反省が大嫌い」

古賀氏さんによれば、官民ファンドには、失敗を検証する仕組みも欠けているという。

「新しい事業を作るための研究会や審議会はあります。しかし、失敗した後に『なぜ失敗したのか』『誰に責任があるのか』を検証する審議会はないんです。責任を追及される側が、自分からそんな組織を作りたいと思うはずがありません」

さらに、クールジャパン機構を含む多くの官民ファンドは、安倍政権の成長戦略として作られてきた。
その安倍政権の政策を継承する高市首相のもとで、十分な検証が行われるのだろうかーー。

古賀さんは厳しい見方を示す。

「高市さんは反省が大嫌いな人です。安倍政権時代に作られた官民ファンドの失敗を認めれば、安倍さんの政策に傷をつけることになる。反省した途端に、自分たちの負けを認めたように感じるのでしょう。でも、反省がないところには教訓も生まれません。そうなれば、同じ間違いを繰り返すだけです」

すでに海外で売れ始めている作品や企業に国が投資すれば、表面的には「成功」を演出できる。しかし、「そうした有望な事業には、国が介入しなくても、すでに民間資金が集まっている」と古賀さん。


反対に、まだ成功するか分からない事業を官僚が選べば、国民の税金が失われる可能性が高い。古賀さんは、官民ファンドそのものを廃止すべきだと訴える。

「国にお金がないと言いながら、成功率の低い官民ファンドに莫大な資金をつぎ込む必要はありません。国民のための政策になっていないんです。こんな無駄な事業はやめて、その分を社会保障に回すなり、国の借金を返すなりしたほうがいい」

名前と看板を掛け替えただけで、失敗の構造まで引き継いではいないか。「ものがたり大国」を掲げる前に、まずは540億円もの赤字を生んだ“失敗の物語”を検証する必要があるだろう。

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