《対象はほぼ女性》兵庫・赤穂市役所で異例の“玉突き雇い止め”…非正規130人がリストラへ

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《対象はほぼ女性》兵庫・赤穂市役所で異例の“玉突き雇い止め”…非正規130人がリストラへ

赤穂市民病院の赤字経営が大規模な「玉突き雇い止め」に(写真:minack/PIXTA)



兵庫県と岡山県の県境に位置し、「忠臣蔵」ゆかりの地として知られる兵庫県赤穂市で8月20日、突然「大量解雇」の話が持ち上がった。赤穂市役所で働く非正規の「会計年度任用職員」約130人が、任期切れの来年3月末をもって再任用されず、「雇い止め」となる見通しというのだ。

赤字続きの「赤穂市民病院」が再建のため、2027年4月に医療法人「伯鳳会」(同市)を指定管理者とする公設民営となり「公立赤穂中央市民病院」となることが決まっている。

赤穂市民病院と伯鳳会の赤穂中央病院が統合することから、市民病院の職員の転籍問題が持ち上がった。市が市民病院の職員に行った意向調査で、看護師を含む508人中104人が市役所への異動を希望したため、オーバーフロー解消のため市役所で働く非正規がリストラに対象になり、非正規職員約550人のうち130人を来年度は契約しないということになったのだ。対象となる130人は、ほとんどが女性だという。

全国でも例を見ない“玉突き雇い止め”が起きようとしている。

「これまでは、行政機関が非常勤職員などを低賃金で雇用する“官製プア”が問題視されてきましたが、今後は、財政悪化による行政機関の縮小によって雇用そのものが失われる“官製失業”ともいうべき問題を象徴するケースです」

そう語るのは神戸国際大学経済学部の中村智彦教授。
赤字経営の公立病院は全国にあり、今後も財政難を抱えた自治体が赤穂市に続く可能性があると懸念する。

病院経営を逼迫させる原因は診療報酬による価格コントロールがうまくいかず、人件費や光熱費などコスト増がそのまま赤字に直結している点が考えられる。さらに、度重なる医療事故が起こったため、地元住民が安心して通える病院ではなくなった、という特殊な事情があった。

「地方の公立病院では、医師や看護師を確保できないため、病床や設備があっても十分に活用できず、それが患者数の減少につながり、さらに経営を悪化させるという悪循環が起きています。赤穂市民病院についても、病院自身が人口減少や医師不足などによる患者数の減少に加え、人件費や物価の上昇を経営悪化の要因として挙げています。個別の医療事故と経営悪化との因果関係を単純に結び付けるべきではありませんが、地域医療では住民からの信頼を維持することが病院経営にとっても非常に重要です」(中村教授、以下同)

公立病院の存続が困難になる一方、病院の職員は自治体の地方公務員であるため、簡単に人員削減できない。そこで今回「雇用の調整弁」のように扱われたのが「会計年度任用職員」という立場の非正規職員だ。

130人という大規模なリストラだったためマスコミにも取り上げられて注目されたが、それは氷山の一角にすぎず、小規模なレベルでの非正規のリストラは各地で起きていると中村教授は指摘する。


会計年度任用職員とは地方公務員法改正で新たに設けられた形態で2020年4月1日から導入されている。総務省によると、全国で68万6000人(25年調査)おり、このうち76.1%が女性だ。

「民間の有期契約労働者には2013年から『無期転換ルール』が導入されました。ただし、一般職の地方公務員である会計年度任用職員には労働契約法は適用されず、このルールの対象外となります。

会計年度任用職員制度は地方公務員法などの改正により2020年度に導入された別の制度です。

1年契約なのだから、契約更新されないことを承知で就職したのだろう、という話も聞きますが、組織の都合で人員を調整する必要が生じたとき、真っ先に調整の対象となる人たちが会計年度任用職員で、法改正でそのような立場の人を作ってしまったのです」

会計年度任用職員は正規職員との待遇格差を解消する目的で導入され、従来の非常勤職員や臨時職員、パート職員が移行した。任期は原則、4月1日〜翌年3月31日までの最長1年間。24年6月に制限が撤廃され、現在は自治体の判断で上限なく再任用が可能になっている。


「自治体によってはボーナスも支給されるとはいえ、基本給は低く昇給もない。その自治体が財政難に陥れば真っ先にリストラの対象になるという不安を抱えながら働くことには変わりはありません」

窓口対応やデータ入力などの一般事務職から、保育士や保健師、看護師、図書館の司書、心理職など専門資格を必要とする専門職、土木技術や清掃、調理、用務員など技術職まで幅広い職種があり、具体的な応募状況や条件は自治体によって異なる。

2024年11月、日本労働弁護団(東京都千代田区)は採用後も同じ専門職で勤務し続けられるように処遇の改善を訴えた経緯がある。女性推進を図る政府の「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」(座長:矢田稚子内閣総理大臣補佐官)は、2025年3月、今後の課題と対応策をまとめた報告書を石破茂首相(当時)に提出した。

その中で会計年任用職員について「常勤化等の処遇改善を進めること」などと明記したものの、「働いて、働いて」を連呼して10月に発足した高市政権では会計年度任用職員たちが安心して働ける環境を整えているわけではない。

今年4月「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が改正されたばかりだが、「女性が仕事で個性と能力を十分に発揮できる社会を実現する」という理念からかけ離れている。

「行政機関の人員削減は、行政サービスの低下だけでなく、地域の雇用や消費にも影響します。人口減少が進むなか、若い世代、とりわけ若い女性の大都市圏への流出を抑えるためには、地方に安定した雇用をつくることが重要です。
『女性は結婚や子育てをするのだから非正規雇用でもよい』といった旧来型の発想では、若い世代から働く場所として選ばれなくなります。自治体自身が地域の雇用の質をどう確保するのかという視点も必要です」

たかがリストラだと思うだろうが、地方の衰退を招く一歩なのだ。

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