「高市首相に助言レベルのことを求めているわけではない」“超党派議連”山尾志桜里顧問が提言「首相はICC支援の明言を」
赤根所長を支援する方針を示した高市首相(写真:本誌写真部)
ICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長(70)が8月18日、米国のトランプ政権から制裁対象に指定され、以後、赤根所長は米国内の資産凍結、入国禁止、米国人・米国企業との取引遮断の対象となった。
これを受け、「人権外交を超党派で考える議員連盟」(共同会長、中谷元氏・68、舟山康江氏・60)は19日、日本政府に対して「米国の新たな制裁の撤回を求め、ICCへの揺るぎない支持と支援の表明を強く要請する」内容を含め、米国の措置を「法の支配に対する重大な侵害として、最も強い言葉で非難する」と緊急非難声明を出した。
だが同日、高市早苗首相(65)は記者団に「大変残念に思う。米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応する」と述べるにとどまった。それから10日あまり、事態は大きく動きつつある……。
「人権外交議連」顧問を務める山尾志桜里氏(52)に話を聞いた。
「19日に出した人権外交議連の緊急避難声明は、中谷会長、舟山康江会長、大岡敏孝事務局長(54)の3名と意見交換を重ねてのものです。
同日の高市首相の発言内容に関して、議連では『“残念”という言葉は感想に過ぎず、国家の意思が示されていないという点が最大の問題だ』という共通認識でした。
日米関係のなかで、日本はアメリカに配慮せざるを得ない部分はあるかもしれません。それでも、国家の意思をどう伝えるかが外交の知恵であり国力です。“大変残念”で終わらせるのではなく、ICCを今後も支持していく意思、そして制裁対象とされてしまった、在外邦人である赤根智子所長を守り抜く国家の意思を示すべきだと考えています。
すでにオランダ(ICC本部所在国)は制裁を受け入れないと明言し、フランスは非難。国連人権高等弁務官も制裁解除を求めています。日本と同じく制裁対象となったセネガルも、ICCを全面的に支持しています。各国が何を大切にし、どう行動するかを、明確に示しているんです」
19日の同議連の非難声明も大きく報道されると、世間では署名活動やSNSでの書き込みなどに発展し、赤根所長への支持や制裁撤回への関心が高まった。24日には、日本政府に米国へ抗議して即時撤回を求める、ICCの断固支持を明確にするよう要請する声明を議決。
そして高市首相は25日の会見で「今回の措置は日本の立場と相容れるものではなく、大変深刻に受け止めている」「赤根氏を守らなければならない」と述べることとなった。山尾顧問はこの首相の発言について、Xで「1歩前進」と投稿している。
「高市首相の“言い直し”を評価できる部分は2点あります。まず日本がこの制裁を『受け入れない』という立場を明確にしたことです。これは国際社会に対して日本の基本姿勢を示したという意味で重要です。もう1つは、赤根智子所長を守るという意思を示したことです。この2点は前進だと受け止めています」
一方で、まだ足りない部分も「ハッキリしています」として説明する。
「最大の問題は『今後もICCを支援し続ける』という従来の明確な表現が避けられていることです。
日本はICCの最大の支援国であり、歴代の総理・外務大臣が一貫して『引き続きICCを支援する』と述べてきました。しかし今回、米国が制裁対象にして以降、高市首相も茂木敏充外相(70)も、外務報道官も、これまで必ず使ってきた文言を巧みに避けています。
過去形で語るだけでは、未来への国家の意思が示されませんし、表現を少しずつ変えることで、後に大きな方針転換が行われる可能性も出てくる。国際社会における日本のプレゼンス(存在感)としても悪影響です。
だからこそ、高市首相は『ICCを今後も支援し続ける』という、シンプルで強い言葉を、あらためて明言すべきだと考えます」
もうひとつの「足りない部分」は「赤根所長をどう守るのか、具体策が示されていないこと」だと話す。
「米国の制裁発動には、前例からみて1カ月の猶予期間があると思われます。よって9月18日までに、日本政府がどれだけ具体的に赤根所長を守れるかが問われます。『送金など金融取引で困らないようにアドバイスした』という助言レベルのことを首相に求めているわけではない。
首相にしかできないことは、米国政府に対して制裁拡大を防ぐよう主張することです。そして金融庁に働きかけ、二次制裁のリスクを回避しつつ、日本の金融機関が赤根所長との取引を継続できるようにすることです」