「命ある限り頑張ります」最高齢97歳女性が格闘ゲーム『鉄拳』に大熱狂!介護施設で芽生えた“熱すぎる”生きがい

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「命ある限り頑張ります」最高齢97歳女性が格闘ゲーム『鉄拳』に大熱狂!介護施設で芽生えた“熱すぎる”生きがい

美容師として30年以上働いてきた髙比良のぶ子さん(97歳・左)とマンションの管理人をしていたしっかり者の渡部絹子さん(85歳・右/写真:TEKKEN〔TM〕8&〔C〕Bandai Namco Entertainment Inc.)



「いくつになっても、やっぱり勝ちたい!」をスローガンに、高齢者たちが熱戦を繰り広げるeスポーツ大会がある。

大会の中心となっているのは、愛知・岐阜・三重の東海地方で18の介護施設を運営する「あみーご倶楽部」だ。参加者たちは、対戦型格闘ゲーム『鉄拳』で本気の勝負を繰り広げている。

なんと、参加者の最高齢は97歳!

大会はどのようにして始まり、参加した高齢者たちにはどのような変化をもたらしたのか。主催する一般社団法人ケアeスポーツ協会の理事で、「鉄拳プロプレイヤー浜ちゃん」としても活躍するプロゲーマーの浜進平さんはこう話す。

「あみーご倶楽部の運営会議で出た、『eスポーツってどう?』という、本当に軽い雑談から始まりました。まずはやってみようという精神があるので、2019年の冬に初めて大会を開催したんです」

とはいえ、オンライン対戦ゲームを一度も経験したことのない高齢者や、施設職員の挑戦するのは一筋縄ではいかなかった。

「最初は将棋ゲームをやってみようということになりました。
ただ、参加者のほとんどがタブレットに触った経験すらなく、画面に対戦相手の顔が映るだけでも驚かれていました。画面の向こう側に、離れた場所にいる人がいるということも、なかなか伝わりにくかったですね(笑)」

高齢者がプレイしやすい環境を整えるため、運営側は試行錯誤を重ねた。

「対戦相手が目の前にいないことを理解してもらったり、“マイタッチペン”を用意したりしながら、高齢者の方でもプレイしやすい方法を手探りで見つけていきました。そこは大変でしたね」(浜さん、以下同)

こうして手探り状態で、オセロや将棋の大会を開催してきた。そんな大会に転機が訪れたのは、第9回のことだった。

「eスポーツを掲げるなら、格闘ゲームにも挑戦してみようということになり、エキシビションマッチとして『鉄拳』を取り入れました。すると、皆さんが僕たちの想像をはるかに超える上手さで戦ったんです」
派手なアクションと爽快感があって、見た目にもわかりやすい『鉄拳』は大いに盛り上がった。

「そこで第10回からは『鉄拳』をメインタイトルに変更し、対戦者がポーズを決めたサムネイルも作るようになりました。
単なるレクリエーションではなく、“競技”だというイメージづくりが大切ですから」

■オンライン開催で参加者の負担も軽減

『鉄拳』を導入する以前、大会は三重県津市の榊原温泉にある施設で開催されていた。しかし、参加者を会場まで連れていくことは、施設職員にとっても大きな負担だったという。

完全オンライン化してからは、各施設から気軽に参加できるようになり、参加者も増えていった。

次の冬で14回目を迎えるケアeスポーツ大会。毎回、あみーご倶楽部を中心に、名古屋市内の介護施設からも参加者を募り、各施設から選ばれた約10人が腕を競う。優勝者には、名前が刻まれたクリスタルトロフィーが贈られるという。

「負けた方は、本当に悔しそうにされます。一方、勝った方はとても喜ばれて、トロフィーを自分の部屋や施設の入り口に飾る方もいます。
なかには、涙を流して喜ぶ方もいらっしゃいます」

そこで、実際にケアeスポーツ大会に参加した3人に、感想を聞いた。

■「やるからには負けたくない」89歳が得た新たな目標

大澤春子さん(89)は、かつて華道と茶道を教えていたという、上品なたたずまいの女性だ。施設ではトランプやオセロを楽しみたいと思っていたものの、なかなか同じレベルで対戦できる相手が見つからず、退屈を感じていたという。

「格闘技なんて、90年近く生きていますが、やったことがありません。人をぶったこともありませんから、ゲームの中で初めて人を打ちました。

何が何だかわからないまま、画面を見ながら手をバタバタと動かしていたら、1勝できたんです。2回戦では、いつも優勝しているという強い方に当たって、負けてしまいました。

もっと勉強して、次はいちばん強い人に挑戦したいという目標ができました。
やっぱり、やるからには負けたくないです」

大会に挑戦する際には、ひ孫から「頑張れ!」と応援されたという大澤さん。いつか、ひ孫とも『鉄拳』で対戦したいと意気込んでいる。

■「“アリサ”になりきってキック!」85歳の夢は優勝

渡部絹子さん(85)は、現役時代にマンションの管理人を務めていたしっかり者。施設でも利用者同士をつなぎ、会話を楽しむ社交的な女性だ。

趣味はピアノで、ケアeスポーツ大会への参加はこれまでに3回。『鉄拳』では、見た目のかわいらしさから「アリサ」というキャラクターを選んでいる。

「2回戦までは進んでいるんですけど、なかなか決勝には行けません。対戦中はアリサになりきって、ひょいひょいとキックやパンチをしたり、飛んだりしました。
夢は優勝です」

大会が近づくと、渡部さんは積極的に練習に励む。当日は、仲のよい利用者たちが後ろに集まり、「頑張れ!」と声援を送ってくれるという。その応援も、大きな励みになっているそうだ。

■最高齢の97歳「命ある限り頑張ります」

そして参加者のなかで最高齢となるのが髙比良のぶ子さん(97)だ。

髙比良さんは、美容師として約30年以上働いてきた。その経験もあってか、いまも毎日自分で化粧をするおしゃれな女性だ。取材当日も、ラメ入りのアイメイクで目元をきらきらと輝かせていた。

ふだんは施設で洗濯物を畳んだり、職員の仕事を手伝ったりする人気者だという。


「職員の方に教えてもらって、頑張りました。負けちゃって悔しかったです。対戦した後は疲れて、炭酸飲料を飲みました。命ある限り頑張ります」

スタッフによると、対戦中の髙比良さんは思わず声を上げ、表情も生き生きとして、とても楽しそうだったという。

■「勝ちたい」という気持ちが新たな生きがいに

「ゲームをすると、『負けて悔しい』『勝ってうれしい』『次はこの人に勝ちたい』という気持ちが生まれます。その感情のメリハリや興奮は、ゲームだからこそ味わえるものでもあると思います」

浜さんは、それが新たな生きがいにつながっていると実感を込める。

「一喜一憂する高齢者の方々を見ていると、新たな生きがいにつながっていることを日々感じます。最初は、僕たちにも『高齢者には難しいのではないか』という思い込みがありました。
でも、これほど喜んで挑戦してくれたことには驚きました」

将棋やオセロよりも、格闘ゲームのほうが高齢者に向いている面もあるという。

「将棋やオセロは長時間に及ぶこともあるため、参加者の体への負担を考えて制限時間を設けていました。ただ、それではなかなか勝敗が決まらず、不完全燃焼に終わることも多かったんです」

その点、『鉄拳』のような格闘ゲームには明確な利点がある。

「格闘ゲームなら、わずか3分ほどで勝敗が決まるので、とてもわかりやすい。将棋やオセロと比べても、皆さんの喜ぶ姿を目にする機会が多いように感じます」

現在、ケアeスポーツ大会は、あみーご倶楽部が運営する介護施設を中心に行われているが、今後は全国へ広げていきたいと浜さんは展望を語る。ほかの施設から問い合わせも寄せられているという。

「オンラインなので、環境さえ整えば全国どこからでも参加できます。参加したいという施設があれば、もちろん大歓迎です。

インターネット環境をはじめ、さまざまな問題があって導入に踏み切れない施設もあると思います。こちらから積極的にアプローチし、サポートしていきたいですね。

対戦ゲームは、見ている職員さんも楽しいんです。勝ったときに一緒に喜べるのも魅力です。97歳の方が勝ったら、ものすごく興奮しますよ」

オンラインゲームは年齢も立場も関係ない。悔しさをバネに「次こそ勝ちたい」と挑み続ける姿が、“いくつになっても持てる新たな目標”の大切さを教えてくれた。

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