「見直した事はない」高額療養費パブコメ約5300件も反映ゼロ…厚労省の冷酷答弁と専門家が指摘する「お問い合わせフォーム」化問題

女性自身
「見直した事はない」高額療養費パブコメ約5300件も反映ゼロ…厚労省の冷酷答弁と専門家が指摘する「お問い合わせフォーム」化問題

自らも関節リウマチの持病を持つ高市首相だが……(撮影:長谷川新)



《治療を諦めることになるかもしれない》
《病気になった人が、なぜこれ以上の負担を強いられるのか》
《内閣広報費を10倍に増やすなら、その分を高額療養費に充ててほしい》

高額療養費制度の自己負担上限額引き上げをめぐり、SNS上では患者や家族などから切実な声が上がっている。

厚生労働省が今年6~7月に実施したパブリックコメント(意見公募)にも、計5280件もの意見が寄せられた。その大半が負担増に反対するものだったと報じられている。

ところが、政府は寄せられた意見を受けて改正案を修正することなく、引き上げを進めた。

「10月16日の参議院予算委員会では、立憲民主党の山内佳菜子参議院議員がこの問題を追及。厚労省の宮崎敦文保険局長は、パブコメを受けて『具体的にこの見直しをさらに見直したということはございません』と答弁しました」(社会部記者)

なぜ、これほど多くの声が集まっても政策は変わらなかったのか。

「最大の問題は、意見を聞くタイミングなんです。すでに予算まで決まってから意見を募集しても、政策を変えるのは非常に難しいんですね」

そう指摘するのは、武蔵大学社会学部准教授の市川衛氏だ。


■国民の声を聞いても、政策を変える義務はない

「高額療養費の引き上げは、2025年3月、患者団体などの反対を受け、当時の石破茂首相がいったん見送りました。しかし、高市早苗政権のもとで再び見直しが進められ、今年8月から引き上げが始まりました。2027年8月には、さらなる引き上げが予定されています」(前出・社会部記者)

例えば、70歳未満で年収約650万~770万円の人の場合、月額上限の基準額は従来の8万100円から、2027年8月には11万400円へと、3万300円引き上げられる。

厚労省がパブコメを実施したのは6月6日から7月5日まで。7月29日に結果が公表されたが、改正案の修正はなかった。

そもそもパブコメとは、どのような制度なのか。

「国民生活に影響する政令や省令などを制定する際、事前に案を公表して意見を募る制度です。政府の『e-Govパブリック・コメント』というサイトなどで募集され、誰でも意見を提出できます。
ただし、法律上は寄せられた意見を必ず政策に反映する義務はありません。求められているのは、意見を考慮し、その結果を公表することなんです」(市川氏)

■「予算が決まってから意見を聞く」パブコメの矛盾

市川氏が最も問題視するのは、意見を募集する時期だ。

「高額療養費の自己負担上限額をいくら引き上げるかは、前年末の大臣折衝などを経て決まり、その後、国会で予算が審議されます。

ところが、パブコメが行われるのは、その後なんです。

すでに予算まで決まった段階で『負担が重すぎる』『引き上げをやめてほしい』という意見が届いても、政策を変更するには、決まった予算にも手を入れなければならない。現実的には非常に難しいんですね」

つまり、国民に意見を求めるころには、政策の大枠がすでに決まっているというのだ。

「今のパブコメは、企業の『お客様お問い合わせフォーム』に近いと思うんです。商品について意見を送っても、作り直すかどうかは企業側の判断。
次の商品開発の参考にする、ということに近い。

でも、国民は、たくさん意見を出せば政策に反映されると期待しています。そこに大きな認識のずれがあるんです」

■ 石破氏は見送ったのに…なぜもっと早く国民の声を聞かなかったのか

市川氏は、石破前首相が2025年3月に引き上げを見送った判断を評価する。

「普通だったら、あそこまで進んだ段階ではなかなか引き下がれない。よくあのタイミングで引き下がったな、と思います」

だからこそ、その後の見直しでは、もっと広く国民の意見を聞くべきだったという。

「厚労省も患者団体などから丁寧に話を聞いたと思います。ただ、誰から話を聞くかを決めているのは、あくまでも厚労省です。行政側が選んだ人だけではなく、もっと広く意見を募るべきだったのではないでしょうか」

市川氏が参考例として挙げるのが、イギリスの「グリーンペーパー」だ。


「イギリスには、政策の具体的な内容を決める前に案を公開し、広く意見を聞く仕組みがあります。

日本でも、今回のように一度見直しが見送られるほど大きな議論になった政策なら、予算や制度の大枠を決める前に、広く国民から意見を募ることができたはずです。

すべての意見を反映することはできなくても、『この部分は政策に反映しました』と示すことができれば、国民の納得感も違ってくると思います」
国民の声を聞くための制度なのに、その声が届くころには、政策は事実上決まっている。約5300件もの意見が寄せられた今回の高額療養費引き上げの問題は、パブコメが形だけの手続きになっていないか、問いかけている。

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