残留元日本兵の家族が両陛下にご接見…実現させた日本人女性
3月2日、ベトナムの首都・ハノイのシェラトンホテル。同国を訪問中だった天皇皇后陛下が接見されたのは、グエン・ティ・スアンさん(92)をはじめとする「残留日本兵」のベトナム人妻とその家族たち16人だった。
太平洋戦争後もベトナムにとどまった約600人の元日本兵は、フランスからの独立をかけた第一次インドネシア戦争に参加。一時は「新ベトナム人」として歓迎されたものの、政情の変化によって’54年以降、次々に帰国を余儀なくされた。とり残され、苦難の歳月を乗り越えてきた残留日本兵の家族たち。歴史に埋もれてきた彼らをこの晴れの日に導いたのは、現地在住の1人の日本人女性だった。
25年前、日本語教師として単身ハノイにやって来た小松みゆきさん(69)である。ふだんはホンダのバイクで町を飛び回っている彼女だが、この日は白いブラウスにハイヒール。
緊張した面持ちで、両陛下に16人を一人ひとり丁寧に紹介していた。
「彼らの存在は“隠し事”のようになっていたんです。帰国した元日本兵は黙っていたし、残った家族もしゃべらない。