元宝塚男役トップ朝海ひかる、『ローマの休日』王女演じる
「初演時、東京公演の千秋楽でのこと。小倉さんが役の上で煙草を吸ったんです。その火だねが小倉さんのズボンの裾の折り返しに落ちてしまって、あわやボヤ騒ぎに。前列のお客様に教えていただいて、助かったんですよ」
そう語るのは、女優の朝海ひかる。無垢で愛くるしいヨーロッパ某国のアン王女と特ダネを狙うアメリカ人新聞記者ジョー・ブラッドリーの、身分違いの淡い恋がせつない名作映画『ローマの休日』。その舞台版が7年ぶりに朝海、吉田栄作、小倉久寛のオリジナルキャストで開幕。舞台では、映画ではあまり描かれなかった彼らの人物像を掘り下げる。
「王女様が育った環境やふだんの生活を思い浮かべてみると、私自身は王女よりもいろんな雑学や雑念を持ってると思うんです。
ですから、まず王女っぽさを出すためにそういうものを排除して、シンプルに王女をイメージします」(朝海・以下同)
ジョーとアーヴィングを「赤狩り」で追放されたジャーナリストに設定し、原作にはないテーマ「籠の鳥と自由」を強調。単なるラブロマンスではなく、ハリウッドの暗黒時代の空気も。また、ローマ市内の観光名所の映像を背景に、ステージ上でスクーターを乗り回したり、人形とダンスをして群衆を表現したり、工夫が楽しい。