日本初の女性獣医師はいまも「365日開院・夜間急患対応」
梅雨のさなかの6月半ば、都内の赤坂見附駅からほど近いビルの2階「赤坂動物病院」の待合室では、ペットを連れた幾人もの飼い主が名前を呼ばれるのを待っていた。午後8時を過ぎても患者がやって来るのは、「365日開院・夜間急患対応」を実施しているからこその光景だ。どの飼い主の顔も、家族同然の犬や猫の健康状態が芳しくないせいか、どこか不安げだ。
「こんばんは。あら、ピッピちゃん。少々辛い抗がん剤の治療も終わって頑張ってますね」
人間でいえば老年期の15歳のミニチュアピンシャー犬に声をかけたのは、総院長の柴内裕子先生(81)。首に聴診器をかけた、小柄な白衣姿が待合室に現れただけで、雰囲気が一瞬で明るくなった。
「この子はね、2年前から悪性腫瘍を患っていて、抗がん剤治療も行っていました。
でも今は大丈夫!長生きしようね」(裕子先生)
ピッピの黒い小さな頭をやさしくなでる先生の隣で、飼い主の女性が「裕子先生との出会いは、もう30年前の先代の犬のときからです。かみグセがあり、困ってNHKラジオのペット相談室に電話したら、たまたま裕子先生が担当で、本当に親身になって答えてくださって。